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7)まとめ

図IV-6-26に右側通航における総合評価結果を示す。なお、順中逆西の総合評価をあわせて示す。

右側通航とすることにより、来島海峡航路出入り口付近の交通環境に改善がみられた(図IV-6-26、第6段)。

一方で、新たに大型船に対して潮流の影響が、より大きく現れることとなった(図IV-6-26、第3段)。これは中水道の北航時に最狭部の南側水域で減速したために圧流された(シナリオ5:中水道・北航:図IV-6-20(1))状況と西水道の南流時に変針時機が遅れたため、圧流が増大し馬島に異常接近した状況によるものである。

環境ストレス(図IV-6-26、第1段)ついては、中水道では順中逆西(順潮で航行する)よりも右側通航(逆潮で航行する)の方が小さくなっている。これは陸岸(馬島・中渡島)への接近速力が逆潮の影響によって小さいためであると考えられる。翻って西水道では、右側通航(順潮で航行する)の方が順中逆西(逆潮で航行)に比べ大きくなっている。これは流下側に小島・馬島が存在するため、陸岸に対する時間的な余裕が少ないことに起因していると判断できる。

生理的反応(図IV-6-26、第2段)では、両水道とも右側通航の方が負担が大きい傾向とみることができる。しかし、同一の水道での比較であるが、航行が方向が異なり(中水道→右側通航:北航対順中逆西:南航、西水道→右側通航:南航対順中逆西:北航)、交通環境も違うため厳密な比較は出来ない。右側通航の中水道の航行状況では、最狭部通過後の右舷への圧流とこれに対する針路制御が負担の要因とされた(シナリオ5:中水道・北航:図IV-6-20(2))。また、西水道の航行状況では変針に伴う回頭制御が負担の要因とされた(シナリオ6:西水道・南航:図IV-6-23(2))。特に、西水道における生理的反応の現れは環境ストレス、潮流影響と対応していると判断でき、西水道を南航する場合の操船の困難性をよく説明しているものと考えられる。

追越しの危険(図IV-6-26、第4段)では、中水道では追越し船・被追越し船の関係が「2:目標航路からの偏位量が50m以上、側方距離が100m以内」となったが、これは潮流により圧流されて、その結果100m以上の側方距離となったものである。結果として、100m以上の側方距離は確保することができたものの、潮流が2船を引き離す方向に働いたためであり、変針途上にある追越し船・被追越し船の潮流を受ける姿勢は、お互いにその都度変化することから、状況によっては2船を接近させる方向に働くことも十分に考えられる。水道内での追越しは危険であり、これを避けるべきであると判断する。

測位誤差(図IV-6-26、第5段)については、順中逆西と同様に、中水道・西水道ともに精度よく測位できる状況であった。しかし、水道内では他船との遭遇状況により、計画針路から外れる状況も有り得るため、正確かつ迅速に測位作業が行えるように、複数の操船目標を設定しておくことが必要である。

 

 

 

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