(2)右側通航:西水道・南航(南流時:シナリオ6)の場合
このシナリオでは、大型船について3回のケース、小型船について1回のケースが実施された。図IV-6-23に大型船の評価結果を、図IV-6-24に小型船の評価結果を、図IV-6-25に基準値による比較結果を示す。
1)環境ストレス
操船環境ストレス値に着目すると、大型船(1回目・2回目・3回目)ならびに小型船ともに、水域A・水域B・水域C(西水道の北側水域から馬島小浦埼付近)にかけて基準値に近い値で推移していることがわかる。順中逆西のシナリオ(北流時・西水道・南航:シナリオ2)においては、小島・馬島の影響により比較的高い値を示すことは認められたが、基準値に至ることはなかった。順中逆西のシナリオでは、潮流(北流)は小島や馬島への接近を阻む方向に作用していたの対して、このシナリオでは南流であるため、これら陸岸への接近を助長する方向に作用していると判断できる。
交通環境ストレス値に着目すると、大型船・小型船とも水域A・水域B(西水道の北側水域から小島の東側水域)にかけて値の高まりを認めることができる。これは先行する同航船によるものである。本船の方が若干速力が大きいため当該同航船に漸次接近したものの、右舷側への圧流(大型船は併せて右転舵)により、見合い関係が解消した(距離軸l000m付近まで)。その後、同航船が南下を開始したため、本船の進路を塞ぐ形となった。大型船・小型船いずれのケースにおいても、同航船と小島との間に挟まれる形で南下を開始し、変針しながら当該同航船を追い越した。距離軸1000m〜2000mの値の変化は、この変針・追越し操船に対応している。
大型船2回目を除いて、いずれのケースも水域C(小浦埼付近)に至るまでの間の値は低く、水域Cの半ばから再び増加傾向を示している。本船が小浦埼沖に至るまでの間は、先行して西水道を南下する同航船が1隻いるだけであったため、交通環境ストレス値は低いものとなった。小浦埼沖(最強流速域)に至ると本船の対地速力が増大し、先行する同航船に接近し始めた。大型船1回目と小型船のケースでは、この同航船を水域E(西水道の南側水域)で追い越している。(大型船3回目では、ウズ鼻の南側水域で実験を終了した。)水域C・水域D・水域Eにかけての交通環境ストレス値の増加は、この同航船に対する接近・追越しの状況に対応している。
大型船2回目では小島沖での変針時機を逸し、馬島(小浦埼)に異常接近した。その結果水道内を大きく蛇行することになり、先に追い越した同航船の進路を横切る状況が発生した。水域Cにおける他船いよる環境ストレス値の増加は、この時の見合い関係によるものである。
環境ストレス値に着目すると、水域A・水域B・水域Cにおいて操船環境ストレス値は総じて高いことから、大型船の場合では3ケースとも、他船による影響も加えられて基準値を大きく超える場所が多くなった。小型船の場合は、他船の影響は少なかったが、水域B(小島の東側水域)における変針・追越し操船時に高い値を示し、地形と併せると基準値を超えることとなった。