らは、大型船と同じように右舷(東)への圧流、西に変針してからの左舷(南)への圧流が認められる。
従って、南流時に中水道を北航する状況においては、最狭部に至る水域では、極力潮流に向首する姿勢で進入することが望ましいと言えるが、最狭部を航過してからは、右舷方向への圧流が発生することに留意する必要がある。また、西方に向首すると左舷への圧流が暫くの間は継続するので、変針の時機ならびにタイドウェイの確保等に注意する必要があると言える。
4)追越しの危険
操縦シミュレーション(2船間相互影響)において、水域I(中水道最狭部の南側水域)では目標航路からの偏位量は50m以上であり、側方距離は100m以上となった。また、水域G(中水道最狭部の北側水域)では、目標航路からの偏位量は50m以下、側方距離は100m以上となった。
水域Iでは、変針点が含まれているため、被追越し船が変針時に南側に圧流されている。追越しは被追越し船が新針路に乗った状況で発生するため、追越し船と接近する状況にはならなかった。水域Gでは追越し船・被追越し船の目標航路がほぼ潮流に沿っていることから、圧流される量が少なく、目標航路からの偏位も抑えられ、かつ接近する状況も発生しなかったものと推察される。
ただし、操船シミュレータ実験の結果にみられるように変針時機のとり方によっては圧流の影響を受け易い姿勢となり、接近してしまう可能性があると考えられる。
5)測位誤差
大型船(1回目・2回目)・小型船とも、航路内を航行することができ、その際の測位誤差は最大で誤差25m程度であった。精度よく測位することができる状況であったと言える。
6)シナリオ5(右側通航:南流時・中水道・北航)に対する考察
大型船は最狭部の南側において先行する同航船を追い越した。最狭部に向首する段階で、さらに先行する同航船と最狭部で並航することになると判断し、減速によってこれを避航した。結果、強い圧流を受けることになり操船上の負担が大きくなった。生理的な反応にも、変針操船、避航操船、および他船への注意が操船者に負担を課している傾向が現れた。
小型船は中水道に至る前の早い段階から減速して、先行する同航船との船間距離を確保した。結果、操船上の負担を少なくすることができた。
南流時に中水道を北航する場合、最狭部付近では逆潮により対地速力が低下するために自船の前後を航行している同航船との船間距離が縮まることになる。水域は制約されており圧流される傾向も大きくなることから最狭部付近での追越しは忌避すべきであると思われる。最狭部の南側あるいは北側の水域においても圧流の影響から同航船・陸岸への接近が発生する可能性があるため、中水道での追越しは困難な状況になると思われる。
ただし、追越しを避けるため流速が大きくなっている場所で速力を減じることは、大型船の操船例にもある通り潮流の影響を受け易くなる。早い段階から船間距離の調整を行う必要があると言える。