潮流の影響(図IV-6-19、第3段)については大型船では斜航角の基準を超える状況は現れていない。これは大型船は逆潮時には対地速力の確保、順潮時には対水速力の確保を優先的に考慮して同航船を追い越す操船を選択したために潮流の影響が少なくなったと考えられる。一方、小型船では潮流の影響が大きく現れている。これは、速力を減じて先行する同航船との船間距離を確保したために、対水速力が減少し、潮流の影響を大きく受けることになった。(シナリオ2:西水道・南航:図IV-6-8、シナリオ3:中水道・南航:図IV-6-11、シナリオ4:西水道・北航:図IV-6-14)
以上のことからは、水道内ばかりではなく、水道の前後の海域において追越し動作をとったとしても、潮流の影響により当該同航船との接近状況が継続する傾向があり、地理的な制約とあわせて操船者に大きな負担を課す可能性が高いと言える。追越しの危険評価(図IV-6-19、第4段)においても中水道および西水道内での追越しの危険性が指摘されている。
生理的反応によると、変針操船・避航操船・他船の注意により操船者は負担感じる、水道内あるいは周辺水域で追越しを行うことは、これらの負担を同時に課せられることになる。
また、順中逆西の航法にしたがって中水道・西水道を航行する状況では、精度よく測位できる状況であることが確認できた(図IV-6-19、第5段)が、水道内で他船との遭遇状況によっては操船計画を変更しなければならない状況も有り得ることから、複数の操船目標を用意しておくことが肝要となる。