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たが、小型船では、基準値を大きく超えて約22°となっている。(この時、小型船は右舷側の同航船に接近することとになった)小型船は、水道の西端を航行してきたことにより、変針した後に、相対的に開いた方向から潮流を受ける姿勢となり潮流の影響を強く受けることになったと考えられる。

水域A(西水道の北側水域)においても、大型船・小型船ともに斜航角が大きくなっている。西方に向首したことにより、潮流を右舷側から受ける姿勢となり左舷(小島方向)への圧流が増大したためである。このとき、小型船の斜航角は大きいものとなり、27°程度に至った。小型船の操船者は針路<302°>に定針した段階で、圧流されている状況を認識できず結果として航路南端近くにまで接近することになった。

以上のことから、南流時に西水道を北航する場合には、ウズ鼻付近での変針時、小浦埼沖屈曲部での変針後、および小島沖での変針後において、潮流影響を強く受けることに注意が必要であると言える。

 

4)追越しの危険

操縦シミュレーション(2船間相互影響)では、水域Dにおいては目標航路からの偏位量は50m以上あるものの、側方距離は100m以上となり、水域Cおよび水域Bにおいては、目標航路からの偏位量は50m以上であり、側方距離は100m以下となった。

操縦シミュレーションにおける追越し船・被追越し船の挙動は、操船シミュレータ実験での航跡と一部で同じような傾向を示している。即ち、水域Dにおいては、被追越し船が逆潮を右舷方向から受ける姿勢で右変針するため、左舷方向への圧流が増大し、結果として追越し船から離れることとなった。水域Bでは、被追越し船が屈曲に従った変針をした後に右舷方向への圧流が大きくなり、追越し船へ接近することとなった。(水域Cにおける接近は、被追越し船が蛇行した結果生じたものであった。)

操縦シミュレーション(2船間相互影響)による評価結果からも、変針点付近での追越しには十分な注意が必要であり、できうるならば変針点付近での追越しは避けるべきであると考えられる。

 

5)測位誤差

大型船・小型船とも同じような変化傾向を示しているが、水域D(西水道の南側水域)において小型船の誤差が若干大きくなっている。これは、速力を減じて航路の西よりに遷移した影響であると思われる。その後、航路から外れることなく航行するすることができ、大型船ともども精度よく測位できる状況であったと言える。

 

6)シナリオ4(順中逆西:南流時・西水道・北航)に対する考察

屈曲した西水道の制約された地形環境に加えて、並航する同航船の影響によって、大型船の環境ストレスが大きくなった。変針操船・避航操船ならびに同航船への注意が負担となっていることは生理的な反応にも現れている。

小型船に対して変針点付近での潮流の影響が顕著に現れた。追越しの危険(操縦シミュレーション)においても同じ傾向が認めることができた。

これらのことから、南流時に西水道を北航する場合は、地形的にも制約される区間が長いことに加え、屈曲部や水道の出入り口付近における変針操船に潮流の影響を受け易いため、水道内では極力船間距離が確保できるように考慮し、特に変針点付近での追越しは避けるべきであると言える。

 

 

 

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