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5.3交通流シミュレーションによる比較評価と考察

前節では、特に逆潮流下での船舶の滞留が海上交通流に及ぼす影響予測のためのシミュレーション結果について述べた。交通の流れから見た場合には、強潮流下、狭隘部における滞留によって困難な出会い状況の発生が予測されるとの知見を得たが、交通流シミュレーションでは個々の船舶の運動性能を明示的には模擬しておらず、潮流や風等の外力が個々の船舶に与える影響と操船能力の関わりについて評価できる手法ではない。特に、西水道を順潮で航行する場合などは、前節で用いた仮定の如く圧流による横方向への偏位制御が容易に可能ならば、狭水道を短時間で通過する事となり、この陰に潜む操船の困難さを抽出・評価することが出来ない欠点を有している。

従って、来島海峡通過の全域に渡り、航法の相違による比較評価が可能な手法ではなく、外力優勢な狭隘部通航の評価は全章までに述べられた種々の手法に委ね、航法の違いによる総合的な比較評価においては、専ら、来島海峡航路出入口付近における出会い状況の比較評価を担当する事となろう。

この来島海峡航路東西出入口付近における交通流の観点からの評価については、平成8年度報告書に詳しいが、凡その目安として種々の手法による比較評価結果と並列的に取り扱う利便性を考慮し、東西出入口付近海域における推定困難度を下表の如くまとめた。

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表中、1トリップ平均とあるのは、東西出入口付近海域を航行した1隻の船舶の平均推定困難度を、更に2000隻弱の全サンプルについて平均した値であり、最大値の平均は、各船舶が当該評価海域航行中に遭遇した推定困難度最大値を全サンプルについて平均したものである。

船舶の出会いによる困難な状況の生起は、概ね確率現象として解釈するべきであり、時として発生する困難な状況の生起を出来る限り防止する意味からは、最大値による比較評価が特徴的なものと思われるが、右側通航時においては、平均値も低く、また、偏差も小さくなっており、押し並べて困難な出会い状況の生起が減少するものと期待できる。

 

 

 

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