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(4)シナリオ4(順中逆西:南流・西水道・北航)

大型船・小型船とも操縦シミュレーションでの航路帯が大きく蛇行しており、逆潮による影響が大きいことが伺える。また、操船シミュレータ実験での航跡も同じ傾向を示しており、大型船では、他船の存在による影響もいくばくかはあると思われれるものの、主観評価は危険と判断されている。また、小型船の操船シミュレータ実験の航跡にも蛇行の様子を認めることができる。斜航角も基準値を超える状況が現れている。

シナリオ2(北流時・南航)と同様に南流時に西水道を北航する状況は潮流の影響を受け易いものと考えることができる。

 

(5)シナリオ5(右側通航:南流・中水道・北航)

大型船・小型船とも操縦シミュレーションでの航路帯が蛇行する傾向が認められる。あわせて、操船シミュレータ実験の航跡でも、大型船・小型船とも同様の傾向があり、中水道を逆潮で北航する場合には潮流の影響が大きくなるものと考えられる。

操船シミュレータ実験の大型船は、中水道の最狭部の直前において蛇行し、また中水道の北側水域で操縦シミュレーションの航路帯よりも南側を航行したが、これは南流による圧流が顕著に働いたためであり、船体横方向の潮流速をみても影響が大きく現れていることが分かる。操船シミュレータ実験での斜航角もそれぞれ基準値を超える状況、ほぼ基準値となる状況となっている。

操船シミュレータ実験での小型船はほぼ航路帯に沿って通航することができ、操縦シミュレーションと同様に大きな潮流の影響を受けることはなかった。ただし、主観評価は最狭部付近で若干危険とされているが、これは他船の存在等による影響と思われる。

 

(6)シナリオ6(右側通航:南流・西水道・南航)

大型船の操縦シミュレーションの航路帯は目標航路から大きく逸脱し蛇行している。操船シミュレータ実験では、1回目では航路帯をショートカットする航跡となり、舵角・船体横方向の潮流速とも操縦シミュレーションにあるような大きな潮流影響を受けていない。斜航角も基準値を下回っている。しかし2回目では航路帯を凌駕して蛇行しており、舵角・船体横方向の潮流速とも大きな値を示す局面が多くなっている。斜航角は基準値を超える局面が現れている。

これらのことから、コース取りの違いによって、その後の潮流の影響が大きく変わることになると言える。

小型船では航路帯は目標航路から逸脱することはなく、操船シミュレータ実験での航跡をこれに沿うものとなっている。ただし、斜航角は基準値を超えるまでには至らなかったものの大きな値となり、操縦上困難となる傾向があると考えられる。

大型船・小型船ともに主観評価では危険と評価されており、西水道を南流時に南航する状況は潮流の影響が強く現れるものと判断できる。

 

(7)まとめ

ここでも、大型船の方が小型船に比べて潮流の影響を受け易いことが確認できた。また、右側通航とした場合、中水道.西水道ともに蛇行する傾向が強くなることに注意する必要があると言える。

一方で、順中逆西(南流時・中水道・南航:シナリオ3)における操縦シミュレーション結果(大型船と小型船の違い)ならびに右側通航(南流時・西水道・南航:シナリオ6)における操船シミュレータ実験結果(大型船1回目と2回目の違い)を考慮すると、来島海峡における目標航路の設定ならびに都度々々のコース取りが潮流の影響を大きく左右することになると言える。

したがって、ここで示したシミュレーション手法を応用し、推奨航路を検討することも可能であると考える。

 

 

 

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