2)シナリオ2(順中逆西:北流・西水道・南航:図IV-3-23)
舵角には船速による大きな違いは認められないが、偏位量・斜航角に着目すると馬島ウズ鼻付近では潮流の影響が大きく現れるとともに、速力による差も認められる(速力が小さいほど、潮流の影響が大きい)。これは、ウズ鼻付近の変針時に、南へ圧流される傾向があるものの、針路が目標航路上を向いていることに起因していると思われる。
3)シナリオ3(順中逆西:南流・中水道・南航:図IV-3-24)
舵角・偏位量・斜航角とも潮流の影響が大きいことを示している(特に、中水道の北側水域)。これは、潮流により、偏位量・斜航角が増大するとともに、これをキャンセルする舵角も大きくなっているものと推察される。
また、中水道最狭部付近における大型船が強く影響を受けていることが認められる。
4)シナリオ4(順中逆西:南流・西水道・北航:図IV-3-25)
舵角・偏位量・斜航角とも、大型船(船長300m)のグラフの突出が特徴的である。これは、当該船型では、どの速力(10ノット、12ノットおよび15ノット)であっても航行が不可能となった状況に対応している。
他の船型についても、小島北方において西方に変針した後に潮流の影響が大きく現れている。
5)シナリオ5(右側通航:南流・西水道・北航:図IV-3-26)
偏位・舵角は中水道の最狭部北側の水道付近から潮流の影響が大きくなる傾向が認められるが、中水道南側から最狭部付近にかけては大きな影響は認められない。これは、当該水域付近では流向に沿ったコースであることと、逆潮により舵効きを維持できたことが理由として考えられる。
6)シナリオ6(右側通航:南流・西水道・南航:図IV-3-27)
小島北方から馬島南方のほぼ全航程において、強い潮流影響うけていることが認められる。偏位量・斜航角が甚大であるとともに、舵角も大きく制御が困難である状況であると判断できる。
(2)「順中逆西」と「右側通航」の比較
?中水道(順中逆西:シナリオ1・図IV-3-22、右側通航:シナリオ5・図IV-3-26)
中水道の北側水域における潮流影響は順中逆西時(順潮)の方が大きい。また、中水道の南側水域から最狭部にいたる状況でも順中逆西時(順潮)が大きくなる傾向が認められる。これは、シナリオ5(右側通航時)でも考察したように、逆潮の方が順潮に比べて船体制御が容易となることが理由として考えられる。
?西水道(順中逆西:シナリオ2・図IV-3-23、右側通航:シナリオ6・図IV-3-27)
右側通航時の方が、順中逆西時に比べて潮流の影響が大きく現れている。中水道での考察と同様に順潮の方が船体制御が困難となる傾向あることに加え、屈曲した水道を航行したために、潮流を受ける方向・強さが適宜変化することになり、より大きな偏角・斜航角が発生し、制御に必要な舵角が増えたものと考えられる。
(3)まとめ
今回の操縦シミュレーション結果においては、
・大型船の方が小型船に比べて潮流の影響を強く受けることになる。
・速力が大きい方が、操縦上有利であることが確認できた。
・右側通航時の西水道を順潮で南航する状況は潮流の影響が強い。