日本財団 図書館


じており、針路を維持することが困難になっている。したがって、評価結果は“○”とした。

 

・シナリオ4:追越し目標地点をB地点とした場合

図IV-3-13はシナリオ4(順中逆西、南流、西水道・北航)において、追越し目標地点をB地点とした場合の結果を示している。追越し目標地点付近における航跡の拡大図を見ると、シミュレーション計算開始後13分から15分にかけて追越しがなされている。この時、小島・波止浜間の水道より流入する潮流によって被追越し船である小型船が右舷への圧流を受けた状態での追越しとなっており、2船間の側方距離は約83mと基準値を下回る結果となった。また、小型船は16分以降から本流の影響を受け、目標航路から大きな偏位を生じていることが分かる。したがって、評価結果は“×”とした。

 

3.1.3考察

表IV-3-1に示した全シナリオについて行ったシミュレーション計算結果に対して、以上のような航行の安全性評価を行った結果を整理して表IV-3-3に示している。

まず、中水道を航行する場合について見ると、順中逆西の航法に従った場合には、北航時(シナリオ1)のE地点付近における追越しと南航時(シナリオ3)のD地点付近における追越しの場合に評価が“×”になっており、航行時に注意を要するものと思われる。これに対して、右側通航を行う場合(シナリオ5)にはD、E地点ともに安全に航行することが可能となっており、南流時における中水道の北航に対しては、船舶の航行にさほど大きな影響は現れていないものと思われる。

次に、西水道を航行する場合について見ると、順中逆西の航法に従って南航する時(シナリオ2)にA地点付近において追越しを行う際の最大操陀角を±15°と設定した場合には、衝突・乗り揚げの危険性があるが、最大操舵角を大きくとることによって比較的安全に航行することが可能となっている。しかし、図IV-3-5、図IV-3-12に示しているシナリオ2およびシナリオ4に対する結果のように、評価領域内における航行安全性の評価では“○”としたものの、評価領域に到達するまでの航跡においては、特に小型船に関して潮流等の影響により大きく蛇行している場合がある。したがって、このような状況下においては、航行には特に注意を要するものと考えられる。一方、右側通航で南航する場合(シナリオ6)には、シナリオ2と同様に最大操舵角を大きくとうたにもかかわらず、安全性評価の結果は“××”となっており、右側通航時における小島近傍のA地点付近での追越しは危険を伴うものと考えられる。

以上に示した航行の安全性の評価は、あくまでも表IV-3-1に示したシナリオに基づいて行ったシミュレーション計算結果に基づく評価である。シミュレーション計算においては、追越し状況を作り出すために必要以上に航路を接近させた場合もあり、実際の航行状態とは異なり、操船者が危険を感じて実際には避航動作を行うような局面も作り出している。したがって、総合的な評価を行うためには、人間要素を含めた検討が必要であると思われる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION