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(3)各設定航路の操船困難度と知的負担の比較

4人の実験結果を各設定航路でF-SNS値を集計した。更に、実験で得られた時々刻々の回頭角、回頭角速度、横偏位誤差を用いてE値を求めた。

E値とは、時々刻々の国頭角、回頭角速度、横偏位誤差を用いて、船の種類、潮流の強さ、流向及び航路の屈曲角に対する変針操船の困難度を評価するもので航路環境評価で多く活用されている評価指標である(4)、(5)

そこで操船困難度を示すE値とF-SNS値の比較を行った。図?-3-26にその結果を示す。F-SNS値はE値に同等な対応を示している。

3.2.5まとめ

SNS値を用いて人間の知的負担を推定するためのデータ処理法を開発した。処理後の値をF-SNSと名付け、さらに負荷の変動する時間に対してF-SNS値は十分な対応特性を有することが確認された。

F-SNS値を用いて、航路追従操船、減速保針操船における操船負担の推定解析を行った。

得られたことを以下に列挙する。

1)知的負担を代表する妥当なSNS値は、RRV法によるSNS値を求め、標準偏差内のデータを抽出10秒移動平均を行うことにより得られる。

2)1)でのデータ処理後のSNS値の標準偏差値以上の発生頻度(F-SNS値)により、知的負担の変化を推定することができる。

3)航路追従操船において、ブイヘの接近、変針前、変針中、変針後、変針後の修正にてF-SNS値は高い値を示し、知的負担が高いことが判った。

4)航路追従操船において、変針操船では変針前後が変針中に比べF-SNS値は高い値を示し、知的負担が高いことが判った。

5)F-SNS値は、航路全体の操縦困難度を示すE値との十分な対応が得られる。

6)操船シミュレータ実験全体から操船者は現実の船体運動が計画している操船内容と大きな差が発生するとき、大きな知的負担を受けることが判った。

 

参考文献

(1)小林弘明・竹内昭文・内野明子:2nd'ry taskによる人間の作業負担評価について、日本航海学会論文集、第91号pp.247-253、1994

(2)加藤和彦・重田茂夫・小林敏生・村山義夫・小林弘明・遠藤真・阪口泰弘・市原信:船員のワークロードに関する研究―?.―操船者の心拍変動よりみた自律神経機能の変化―、日本航海学会論文集、第96号pp.167-173、1997

(3)渥美文治:心拍計測によるドライバの意識状態評価.―自律神経指標を用いた緊張感と眠気の計測―、自動車技術会学術講演会前刷集9461994-10

(4)小林弘明・田中清隆:外乱下における変針制御について、日本航海学会論文集、第86号pp.235-242、1991

(5)小林弘明・田中清隆:外乱下における変針操船の困難度について―?.―風外乱の導入と実海域への評価の適用―、日本航海学会論文集、第87号pp.179-187、1992

 

 

 

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