(2)潮流場の検討(平成8年度、9年度)
来島海峡においては、潮流の流向によって通航方式を変える「順中逆西」の航法と呼ばれる特殊な航法が施行されている。航行に最も大きな影響を与える潮流について、調和解析手法による来島海峡全域の潮流の試算を行って潮流場(数値モデル)を作成し、結果を過去に実測された潮流データと比較して、その妥当性を検証した。
作成した潮流場は、以下の評価指標の検討や来島海峡における航法の比較に際してのシミュレーション、シミュレータ実験における潮流場に使用した。
(3)航行環境の評価指標の検討(平成8年度、9年度)
来島海峡のように複雑な地形と潮流、さらに船舶の輻輳する海域における海上交通の安全性を確保するためには、船、人、環境をひとつのシステムとして評価し、安全性を確保するための対策を立案することが必要である。
強潮流と特殊な航法という来島海峡の航行特性を評価するために、操船特性と交通特性を評価する指標を作成した。
?強潮流下の操船の評価指標(操船要素評価)
船の大きさ、速力、操縦性、操船者特性などの影響評価するために
(a)潮流が与える操船への影響評価指標(略称:操船影響)
環境ストレス値、SNS値など
(b)潮流が与える操縦への影響評価指標(略称:操縦影響)
操縦特性(斜航角、操舵量、偏位量など)
(c)潮流が与える測位への影響評価指標(略称:測位影響)
測位誤差量
?交通環境の評価指標(交通評価)
航法の変更で航路特性に期待できる改善効果の評価(略称:交通影響)
避航空間閉塞度、推定困難度など
さらに、現行の「順中逆西」の航法による航行を模擬する操船シミュレータ実験を実施して、潮流場および評価指標の検証を行うとともに、総合評価の考え方について検討した。
(4)航法の比較(平成9年度)
上記(1)基礎調査、特に操船者の意識調査において、現状の来島海峡通航時の問題点は多岐にわたり、航法についても現行の「順中逆西」および代替案としての「右側一方通航」いずれにも長所・短所があるとの指摘がある。
「順中逆西」および「右側一方通航」の両航法による、大型船(全長180m)と小型船(全長65m)の航行を模擬する操船シミュレータ実験を実施し、操船結果に上記(3)評価指標を適用して各航法における問題点を整理した。
(5)航行安全対策(案)の検討(平成9年度)
上記(1)〜(4)の検討結果を踏まえ、来島海峡の航行安全上の問題点とその対応〈案)について検討するとともに、今後の課題について整理した。