我が国におけるDGPS
(1) 実験局
海上用中波DGPSの整備に先立ち、平成7年12月に剣埼(神奈川県)と大王埼(三重県)の中波無線標識局を改修し、DGPS実験局を開局した。
これら2局の選定理由は、剣埼局は方向探知用の、いわゆるラジオビーコンの電波のみサービスしており、一方の大王埼局はラジオビーコンと音声による船舶気象通報を交互にサービスする方式であるため、これらの方式がDGPSデータ送信のためのMSK変調により、どのような影響を受けるかを調査するためである。
調査は、DGPSの信号送信速度が最も影響を与えるものと考え100bpsと200bpsのボーレートを切替えながら、航路標識事務所、巡視船、沿岸や防波堤の灯台等でユーザーの立場での各種調査を行った。
調査結果はDGPSによるラジオビーコンや船舶気象通報への影響は認められず、また今後のDGPSサービスは送信速度の速い方が測位精度の向上につながることから送信速度は200bpsに決定した。
(2) 有効距離の実測
DGPSの有効距離は送信局から200kmを目標に整備を進めている。
各実験局の有効受信距離を測定するため航路標識測定船「つしま」で実測したところ、大王埼局の実測結果は図3のとおりで、目標距離は昼夜ともDGPSが良好に受信できた。
図4は剣埼局の有効受信距離の実測結果で、昼間は200km以上を確実にカバーしているが、夜間は160〜170kmで、目標距離をカバー出来なかったため、現在空中線に傘型アンテナを展張して輻射効率を上げ、運用している。
尚、DGPSの有効受信電界強度の限界基準は電波伝搬路を海上条件として40dbμv/mを採用しているので、陸上伝搬を含む場所で利用されるユーザーは電波の減衰を考慮すべきである。