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る。しかしその誤差範囲は、目標の距離や2本の位置の線の交角条件により変わるので、対象海域に絞っての詳細な検討が必要である。そこでここでは対象海域における陸側および船側による横変位検出精度について検討する。

 

(1) 陸側による横変位検出精度

対象海域における陸上レーダ局としては海上交通センターのレーダ局である。ここから対象海域は方位で345度、距離で10,800mである。また海上交通センターのレーダの誤差は320mの長さの船に対して方位で0.3度、距離で120m程度と推定される。この場合の相手船の横変位検出誤差は、相手船の針路と方位の差角α=10度であることから算出すると、81.4mとなる。

 

(2) 船側による横変位検出精度

パイロットが目標としているのは福浦の岸線を2.8海里(5.800m)に見ることである。

これはAブイから離れること600m程度である。この福浦の岸線をレーダで測定した場合の横変位検出誤差は、通常のレーダで145m程度となる。このことから横変位検出誤差を加味してもAブイから600-145=455mとなり、400m以上離して航過できる。

しかしもし大黒防波堤東灯台(距離11,450m)を船首目標とすると、Aブイからは200mしか離れず、これによるコンパス方位から横変位を検出するとすると、その横変位検出誤差は145m程度となり、Aブイから十分に離れることができない虞がある。

 

4.4 GPSの利用

GPSによる測位精度は95%確率で100m程度であり、自船において横変位を検出する場合は、GPSによる方法を用いることが望ましい。また、DGPSでの測位精度は95%確率で10m程度とされており、現状において横変位を正確に検出できる方法として最も望ましいものである。

ただし、DGPSにおいてせっかく正確な位置が求まっても、それを十分に生かせる情報処理を行わなければ意味がない。例えばDGPSの位置をオフラインでプロットしたのでは実時間性が損なわれる。また紙海図を使用する場合、プロッターを使うにしても、海図の取り替えや座標原点の調整などが必要となり、これまた処理が遅れたり調整誤差が混入する可能性がある。

以上のことからGPSやDGPSを使用する場合、電子海図とGPSを組み合わせ、海図に直接GPSの位置をプロットし、海図の取り替え処理も自動的に行うことが、高精度な位置情報を有効に使うために必要である。

 

 

 

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