日本財団 図書館


(7) タンカーの後進性能

1)タンカーの後進性能の実績

図3.1-23は、大型タンカーの後進試験の結果を表している[6]。横軸が排水量の対数で表現されており、排水量の増加とともに後進性能が直線的に上昇していることがわかる。その理由は、使用できる後進出力の低下が挙げられる。図3.1-24は、本船のDWTと主機関の単位出力あたり受け持つ排水量の関係を示している。DWTの増加に対して出力当たりの排水量は直線的に増加しており、しかも200,000DWT以上ではさらに勾配が急になる傾向がある。ディーゼル船の場合最大前進出力の約85%が後進出力であるから、必然的に使用できる後進出力は低下することは避けられない。

117-1.gif

 

117-2.gif

また、後進時の船首偏向についてもいわゆるHavgaard効果すなわち、右周りプロペラの船尾船体表面圧力分布の左右不均衡による右偏向という説明は成り立たないほど実船試験成績はばらついており、やや右偏向する場合が多いといえる程度である[9]。

図3.1-25は、278,000DWTタンカーがShallowとDeepにおいて、舵を右、左ハードオーバーにとりながら停止操船を実施した図である[3]。深水中では、右能をとり右偏向しながら停船、左舵ならば左偏しながら停船していたが、浅水中ではこの場合、右舵、左舵いずれも船尾を左に(船首右)に偏向させながら停船していることがわかる。このように浅水中では船首偏向作用が非常に強く現れる。

また、図3.1-26の最上段の図は、同船の実船試験において、主機関を45rpm後進一定、舵も一定(35度右舵)として停船させた場合で、中央の図はこれに対して主機は後進一定であるが舵を保針優先でとりながら停船させた場合である。一方、最下段の図は、舵と主機を適宜使用して船長が針路を維持しつつ操舵しながら停船させたもので、舵効きを良くするためBoosting操船を行った結果、ヘッドリーチが他の場合よりも約3倍になっていることが分かる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION