また、後進時の船首偏向についてもいわゆるHavgaard効果すなわち、右周りプロペラの船尾船体表面圧力分布の左右不均衡による右偏向という説明は成り立たないほど実船試験成績はばらついており、やや右偏向する場合が多いといえる程度である[9]。
図3.1-25は、278,000DWTタンカーがShallowとDeepにおいて、舵を右、左ハードオーバーにとりながら停止操船を実施した図である[3]。深水中では、右能をとり右偏向しながら停船、左舵ならば左偏しながら停船していたが、浅水中ではこの場合、右舵、左舵いずれも船尾を左に(船首右)に偏向させながら停船していることがわかる。このように浅水中では船首偏向作用が非常に強く現れる。
また、図3.1-26の最上段の図は、同船の実船試験において、主機関を45rpm後進一定、舵も一定(35度右舵)として停船させた場合で、中央の図はこれに対して主機は後進一定であるが舵を保針優先でとりながら停船させた場合である。一方、最下段の図は、舵と主機を適宜使用して船長が針路を維持しつつ操舵しながら停船させたもので、舵効きを良くするためBoosting操船を行った結果、ヘッドリーチが他の場合よりも約3倍になっていることが分かる。