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海上保安庁は、上述のような体制で我が国周辺海域の海洋汚染の監視取締りを行い海洋環境の保全に努めている。特に東京湾、大阪湾を含む瀬戸内海等の船舶ふくそう海域、タンカールート海域等汚染発生の可能性の高い海域には航空機及びヘリコプター搭載型巡視船等を重点的に配備し海空連携による広域的な監視取締りに当たっており、この結果、海上保安庁は、平成8年には海上環境関係法令違反として787件を送致した。法令別違反送致状況及びその推移は、第2表に示すとおりで、全送致件数については、減少しているが、船舶からの油及び有害液体物質違法排出並びに廃棄物及び廃船達法投案事犯については、平成7年が611件、平成8年が602件とほぼ同数で推移しており、未だ関係者の海洋汚染に対する認識が十分でなく、海洋汚染の防止意識が徹底されていないことを示している。

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巡視船による監視取締り

海洋汚染事犯は、監視取締りが厳しくなるに従い、その目を逃れるため手口がますます巧妙となり、潜在化する傾向がみられるため、工場排水の採水分析及び夜間監視装置の活用等により監視を強化している。

また、平成8年に海上保安庁が確認した油による海洋汚染のうち、排出源不明のものが全体の約17%を占めているが、これらの中には夜間に排出されたものによる汚染が多数含まれているおそれもあるので、これら汚染の排出源を究明するための監視取締り用資器材の整備等により監視取締り体制の充実を図っていくこととしている。

このように海上保安庁では、今後とも監視取締りを一層強化していく方針であるが、もとより海上保安庁の監視取締りの強化や法規制の強化だけでは海洋汚染を防止しうるものではなく、海に係る全ての人々が海洋汚染の実態を十分認識して、青い海を取り戻すための努力をしていくことこそが必要である。

 

 

 

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