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第1編

 

海洋汚染の現状と監視取締り

 

はじめに

 

国民生活や経済をささえるエネルギー源として、膨大な量の原油が大型タンカーにより我が国に輸送され、また、石油製品や原油が、再び船舶により国内各港間で輸送されており、これら海上輸送に従事する船舶から排出される油が、海洋環境に多大な影響を及ぼしてきたことは周知の事実である。

海洋汚染を防止し、より良い海洋環境を将来にわたり維持していくことの重要性は極めて大きいといえる。

海洋汚染の防止は国際間の協力のもとに推進すべき問題として早くから認識され、昭和29年に、船舶からの油の排出についての国際的な規制として「1954年の油による海水の汚濁の防止のための国際条約(0ILPOL条約)」が採択された。また、47年には、国連人間環境会議の決議に対応して主に陸上発生の廃棄物等の海洋投棄を規制する「廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約(ロンドン条約)」が、さらに、翌48年には、OILPOL条約に代わるものとして排出規制の対象の拡大と船舶の構造設備規制等を内容とする「1973年船舶による汚染の防止のための国際条約(MARPOL73条約)」が相次いで採択された。

国内的には、海洋汚染防止に対する世論のたかまりと国際的動向を踏まえ、45年に「船舶の油による海水の汚濁の防止に関する法律」が廃止されて新たに「海洋汚染防止法」が制定され、船舶からの油の排出についての基準が強化されるとともに、廃棄物についても油と同様、原則として排出が禁止されることとなった。さらに、先進工業国のほとんどがロンドン条約の締約国となり、また、国内的にも廃棄物の海洋投棄に関する規制の強化が望まれていた状況から、55年には、第91回国会において同条約の締結について承認されるとともに、

 

 

 

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