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方位は参照針路に沿って正確に追従し,軌道計画どおりの変針特性が得られた.

(3)航路軌跡による変針評価試験

対象の変針は±40度である。はじめの船首方位は270度で,第一回目で230度に変針した後,第二回目で270度に変針した。GPS収録データを用いた航路軌跡を図10に,緯度と経度の方向に分解した速度を図11に示す。ここで,航路軌跡は船首方位と異なる試験船(質点)の移動軌跡であり,速度(Velocity)は対地速度を表す。

この結果より,つぎのことが確認できた。

・ 図10:一回目と二回目の変針後の船首方位270度(西向き)で航行していた。しかし,航路は南方向に移動していたことを示す。

・ 図11:船首方位270度(一回目の変針前と二回目の変針後)の進行方向と直角の緯度速度があったことを示す。風速20[m/s],相対風向30[deg]Hedの風力が船体に作用したため,本船が南緯方向へ流されたことを示す。

 

3. 成果

 

3.1 まとめ

 

(1)性能向上は,補償系と同定系について実施した。

●補償系

ゲインのオンライン計算が無理なためにノミナルパラメータによるゲイン表を採用したが,制御特性の正規化や補間算法の改良により,任意パラメータに対応するゲイン設定が精度良く行えた。

●同定系

従来のアルゴリズムに比べて,高精度なものが構築できた。モデル近似誤差,参照する測定値および算法の改善により,実際の船の運航状態での同定が可能になった。

(2)制御方式の比較試験

●変針応答:

新制御方式が,PID制御とアダプティブ制御と比べて短い変針時間を実現できることが確認できた。

これは,従来の方式ではできなかった。軌道系の参照針路とフィードフォワード舵角により実現する最適な変針軌道を用いることで可能になった。

●保針応答:

荒天の往路と風の復路において,新制御方式の場合は往復時,他の制御に比べて保針性および舵操作性において安定で良好な結果であった。

 

 

 

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