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しかしながら,図1に示すフィードバック制御からなるオートパイロットでは,変針を開始しても,船首方位はすぐに変化せず設定針路に時間遅れを伴って追従する。これは,船の位置は予定したコースに乗らずズレを生じることを意味する。

図2に示す操舵機は,自動操能中に取り得る最大舵角と舵速度が制限されている。命令舵角が最大舵角以上であるとき,またはその時間微分値が最大舵速度以上であるとき,その性能を越えてしまうために命令舵角から舵角までの伝達が正確に行われない。自動操舵系の特性は操舵機特性を考慮しないと,変針の応答や完了時間のズレが起こるという問題も生じていた。

船体特性は,線形化によるモデル誤差,載荷状態,波風,船速等の影響による不確定な変動をもっている。従来の制御器設計では,パラメータの誤差を特に考慮せずに行い,シミュレーション等を通じてその影響を検討していた。種種の条件を満たす制御器を試行錯誤で決定することは設計や調整に多くの時間を費やすことになる。

適応制御は,船体状態の変化に伴い主にZ試験(操船者が手動で一定の舵を取り船首方位がある角まで発達したら,逆方向の動作を繰り返す。)を行い船体パラメータを推定する。簡単な操作性を目指す上でZ試験の不要は重要である。

平成7年度において,上記したオートパイロットの問題点を解決し,ルートトラッキングに必要とされる変針特性の向上の要求に答える新制御方式(図3を参照)を提案し,本制御系を要約すると下記のようになる。

(1)軌道計画とフィードフォワード制御器により,船体の特性や運動状態,操舵機特性を考慮した変針操舵を実現した。

(2)船首方位の安定性確保するフィードバック制御器により,モデル誤差や外乱影響を陽に取り込んだロバスト制御器の設計方法を確立した。

(3)二自由度制御系と参照針路の特徴を用いた同定系により,自動変針中にパラメータを推定する同定手法を構築した。

 

 

 

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