航法リスク・モデルが開発されると、次の段階ではそのリスク・モデルをタンカー航法安全システム(TNSS)と統合化した。その場合には、MapInfoの既成利点やその他の開発ツールやデータベース製品を利用した。こうした開発では、船長やその他意思決定者を支援できる、より更新しやすいフォーマットにこれまでの作業を統合化することも目的とした。
2.研究対象区域
Arctic Tanker Risk Analysis(ATRA)プロジェクトにおける研究対象区域は、モントリオール港から東方のセント・ローレンス川水域、セント・ローレンス湾北部、それにラブラドル海、デービス海峡、ハドソン湾、ランカスター海峡、バーロー海峡などの沿岸水域とした。リスク分析の初期段階では、代表的な航行ルートを特定し、モントリオールから極点に近い北極海にあるベント・ホーンまでのルートを11区間に区分した。今回の研究では、以前に収集したこの11ルート区間のデータよりも広い区域をカバーする地理的データの必要性にも取り組んだ。
3.方 法
3.1 タンカー航法安全システム(TNSS)
TNSS原型機を設計した目的は、過去のデータやオペレータ選定ルートに基づいて航海士や意思決定者に船舶リスク情報を提供できるかどうかを評価することにあった。2通りのデータ・アクセス方式を採用したが、そのいずれもマップ・インターフェースを使用するものである。一方の方法ではオペレータが航行ルートを選定しなければならないが、もう一方の方法では過去の航法安全情報に直接アクセスできる。原型システムの設計と開発は、MapBasic、Visual Basic、Accessなども含めた高速アプリケーション開発ツールを統合化して行った。原型システムの構成要素としては、決定論的航法リスク・モデル、ルート選定・情報システム・インターフェース、過去のデータ、事故原因発生頻度推定値、事故結果予測、デスクトップ型地理情報システム(GIS=Geographic Information System)、データベース管理システムなども含めた(図1)。
3.2 航法リスク・モデル
決定論的航法リスク・モデルは、Institute for Risk Research(リスク研究所)と共同で開発した。このモデルの構造は、主要当直業務、運転準備、リスク状況に基づいたものであり、航法・衝突回避・操船業務、船上システム機能、危険物(船舶、浅瀬、氷塊、障害物)及び海岸線接近感度などからなる。その成果は次の通りだった。主要業務の失敗または船上システムの故障により船舶が危険を回避できない時だけ、事故またはトップレベルの事