日本財団 図書館


タンカー航法安全システム

Brad Judson

GeoInfo Solutions社、(カナダ)ブリティッシュ・コロンビア州ヴィクトリア

 

本論文では、タンカー航法安全システム(TNSS)の原型機を開発するArctic Tanker Risk Analysis Project(ATRA)フェーズ3の成果について概説する。TNSSは、知識データベースに基づいてルートのプラニングと決定を支援できる船舶搭載型リスク管理システムである。ATRAプロジェクトの目的は、船長や意思決定者にリスク評価情報を適時に提供し、既設ECDISや船舶搭載PCシステムと統合化できるシステムを構成することにあった。過去の情報としては、事故発生地点、事故発生頻度、事故の種類、氷原、風、視界、環境感度、その他各種要因などを含める必要があった。航法と衝突回避プロセスに従ってパターン化した予測事故モデルを適用して、ルート・プラン上の各航跡(トラック)ごとにリスク評価を行えるように、TNSS原型機の仕様書を拡大化した。

 

1.概 説

1.1 研究範囲

Arctic Tanker Risk Analysis(ATRA)プロジェクトのフェーズ3では、本プロジェクト本来の研究範囲に立ち返り、リスク分析においてあらゆる石油製品輸送タンカーを含めた場合の諸側面を検討することにした。本プロジェクト本来の目的の一つは、極点に近い北極海のベント・ホーンからモントリオールに向けて航行中の商船“Arctic”号による油漏れを発生させる恐れのある各種原因を分析することにあった。この目的はフェーズ2においてさらに拡大化され、過去の事故頻度と油漏れ頻度の分析に「タイプ」船舶をも含めるようになった。
「タイプ」船舶とは、カナダ北極船舶安全汚染防止規制(Canadian Arctic Ship Safety Pollution Prevention Regulations=CASPPR)に明記されている耐氷性範囲に応じてタイプA、B、C、D、Eに分類されている耐氷船である。フェーズ3では、航法リスク・モデルの設計と実用化に用いる事故原因統計と性能データを提示するために、国際文献を調べ、カナダ船舶事故データを詳細に分析した。航法リスク・モデルの開発目的は、以下に述べるタンカー航法安全システム(TNSS)に欠かせない構成要素を形成することにあった。このリスク・モデル設計では、「タイプ」船舶の運転面と制約面も重要な検討要件となった。したがって、人員配備、経験、装備、船体、推進機の配置などにおける物理的相違点を比較した。フェーズ2で収集した事故結果データも導入した。

船舶のリスクを最低限に抑えるようなリアルタイムの行動方針で支援するか、航行過程をモデル化するために、船舶の内部及び外部状況をモニターするエキスパート・システムは、すでに数種設計されている。本プロジェクトでは、この種のシステムにならって船舶

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION