(DIESEL PROGRESS Engines & Drives 1996年9月号)
6. 大型タグボートに再生エンジンを利用
太平洋沿岸を航行する最大のタグボートと宣伝されている「エスコート・イーグル」号は、D&V Boat Co.社(シアトル)がまさにその通りに設計、建造したものであり、Caterpillar社製3516型エンジン2基を改造して装備している。全長117フィートのこのタグボートはワシントン州のNichols Brothers Boat Builders造船所で建造され、ボラード(係船柱)のけん引力は45.8トンにのぼる。この2月、このタグボートがWilmington Transportation Co.社(カリフォルニア州サンペドロ)にチャーターされた。現在は「エディC」号と改名され、ロスアンゼルスのアンブリングビーチ港で雑多な船舶支援作業に使用されている。
大規模なオーバーホール前には、設計業者もこの種のエンジンでは24,000時間かかると見ていたが、D&V Boat社のフレッド・テイル社長によると、各エンジンの交換に6時間しかかからないように配備されているという。ボルト締めのプレートを取りはずすと、排気管とマフラーを付けたまま各エンジンを丸ごと取り出せる。両エンジンは1,200回転/分で3,100馬力の総出力を有し、フィンランドのラウマで建造されたAquamaster社製1701/Z型動力伝達装置を駆動する。このZ型動力伝達装置は、Emarservices,Inc.グループのSummer Equipment Ltd.社(カナダ、ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー)から納入されたものだ。西海岸で建造される新世代のタグボートの間では、Aquamaster社製動力伝達装置の人気がますます高まっている。
Atlantic Towing,Ltd.社が大西洋沿岸に就航させた全長30メートル、出力4,000馬力のタグボート船団にも、同様のAquamster社製動力伝達装置が装備されている。そのタグボート1基は、バンクーバーの船舶設計会社Rocert Allen,Lid.社が設計し、プリンス・エドワード島のEast lsle Shipyard社が建造した。
ワシントン州の造船所で建造されたタグボートに装備された各動力伝達装置は、Aquamaster社設計のノズル内に6.5フィートの4羽根型プロペラを装備している。このニッケル/アルミニウム/青銅製プロペラは、244回転/分の最高速度で回転し、タグボートを14.3ノットの速度で航行させる。その動力伝達装置には船底ウェルぶたとケーシングプレート・アセンブリが装備されているため、タグボートが海上に停泊している時もデッキを通して動力電動装置を取りはずしやすい。
エンジン・シャフトは、デッキと同じ高さで機関室の後部隔壁を貫通し、Aquamaster社製動力伝達装置へ向けて上方へ5度傾斜している。
「エディC」号の構想は、経済的な船舶支援長距離用タグボートを建造する長期計画の一環として、テイル社長が中古の3516型エンジンを購入した時に始まる。テイル社長は、新型タグボートの研究開発計画を進めながら、購入した中古エンジンの改造も行った。テイル社長は、その中古エンジンと鉛筆書きの鮮明な図面を携え、そのアイデアをJensen Maritime Consultants,Inc.社に持ち込んだ。