2. 舶用ディーゼルの市場を活性化する性能
マーク・マックニーリー
エンジン・メーカーの新目標は出力と性能:「水上には速度制限はない」
舶用ディーゼル機関産業、特にプレジャーボート部門がここ数年好調に売上げを伸ばしている。その主な要因は、米国経済の好景気と、大型プレジャーボートに対する奢侈税が1993年に撤廃されたことにある。全米船舶製造者組合(NMMA)によると、1995年には新造エンジン付きヨットの売上量だけでも30%伸び、5,460隻に達した。
舶用ディーゼルの売上げが伸びたことは、大型船舶の建造とプレジャーボートのカスタム生産による面も大きいが、一方で特に小型船と、さらにはエンジン交換という新販路が見いだされたことも事実だ。
その点を念頭に置いてエンジン・メーカーが発売した最新型製品は、ディーゼル機関の特長である信頼性、耐久性、燃費性をますます高めてきたが、(少なくともプレジャーボートの平均的所有者から)一番求められる舶用機関の特性、つまり性能が新たな開発目標として注目を浴びている。
「性能強化という点はこれまでも常に重要だったが、ここ数年はこの問題に一段と注目が集まってきている」と、MAN Engines & Components社(フロリダ州ポンパノビーチ)のフィル・ワトソン販売部長は言う。「まず第一に、ボートの持ち主が技術面にますます精通してきた。第二に、自分の大型ボートで釣り場にできるだけ速く到着したいという連中がスポーツフィッシング市場にあふれている。
まさにスポーツカーに対するのと同じ気持ちだ。だが、高速道路には法定の速度制限がある。そこで、こうした連中は、スピード制限のない海へ繰り出すというわけだ」
出力/重量比の向上による性能強化と共に、その他多くの要素も小型船のディーゼル化傾向に拍車をかけている。また、クルージングの長距離化、再販価格の引上げ、安全性向上、排気ガスの排出量削減化などに対するニーズもある。
「舶用ディーゼル機関メーカーはいずれも、製品の出力(馬力)強化を図るために絶えず設計を変更しているが、ディーゼル機関の信頼性と耐久性を高めることも忘れてはいない」と、Detroit Diesel社のアル・コゼル船舶営業担当副社長は述べている。また、「ボート購入者はディーゼル機関による付加価値を求め続ける。そのため、高速化を求める市場部門は必ずある。主にスポーツフィッシングを楽しむ人々だ。
当社の24V-71型機は、出力/重量比問題への対応として、40ノットは必要な72フィートのスポーツフィッシング・ボート向けに特別に建造されたものだ」と、コゼル副社長はつけ加えた。
Detroit Diesel社では最近、72フィートのスポーツフィッシング用ヨット「Roscinoli-Donzi」に24V-71T A型プレジャーボート用エンジン2基を初めて装備した。この各エンジンは、2,300回転/分で1,800馬力の出力を出し、ターボチャージャー4基とセラミック耐熱型乾燥排気系統を装備している。12V-71型ブロック2基からなるこのエンジンには、同社のDDEC電子制御装置も組み込まれている。