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(THE MOTOR SHIP 1996年10月号)

 

1. 高速ディーゼル機関、清浄な環境に優しい機関への対応

コリン・サウマン

厳しい市場条件の下で、排出規制に適合する強力機関の開発を進めるメーカー

 

近代経済の下では、船舶専用の高速機関が非常に少なくなっている。メーカーがその商品をさまざまな市場で販売するためには、広範な基準や法規――自動車部門やその他工業部門に適用される排気ガス排出規制など――に適合する機関を建造する必要がある。こうした規制は現在船舶用設備には適用されていないが、船舶部門も新世代の低排出機関を開発する必要に迫られる。こうした流れの中で、メーカーは高速フェリー市場のニーズを満たすために機関の出力増大を図っている。

そうした市場ニーズへの対応を図っている企業にPaxman Diesels社がある。同社では、18気筒のVP185型機の開発を進めている。これまでの12気筒機は、すでに高速フェリーや石油タンカー向けに極東諸国から注文を得ている。出力2,185kW(2,980bhp)の機関2基は、Hyundai社の全長35m、45ノットのキャタマラン船に装備される。18気筒機はまだ確たる受注はないが、Paxman社では「購入注文の引き合いはある」と言っている。18VP185型機は、高速フェリーの主機として1,835回転/分で3,265kW(4,380bhp)の出力がある。発電に使用すると、この機種は1,800回転/分で3,125kW(4,190bhp)、1,500回転/分で2,810kW(3,768bhp)、1,200回転/分で2,190kW(2,937bhp)の連続定格出力を出す。

この機種の全長は12気筒機の2.96mから18気筒機の3.84mまであるが、高さは共に100mm前後。幅は事実上変わらないが、正味重量は7.6〜11.4トンにわたる。現在原型機を建造中だが、1997年中頃には本格的生産品が発売される予定だ。

 

合弁事業

最新型機関の開発費がますます増大するに伴い、Wartsilaと社とCummins社の間に見られるような共同開発契約や合弁事業も実施されるようになった。その利点も徐々に認められつつあり、1997年上半期には17cm気筒型機関の発売も迫っている。この17cm型機関は英国のグベントリー工場で建造されるが、6気筒と8気筒の列形機関と12気筒、16気筒、18気筒のV形機関などからなる。各気筒は排気量4.5リッターのもので、使用率の高い連続定格出力は550kWから2,700kW(750〜3,600bph)までの範囲になる。これらの機関では、完全認可の電子制御装置付きディーゼル噴射システムを採用する。ダベントリー工場では、生産ラインと試験室の建造に総額5,000万米ドル前後を投じてきた。現在すでにテスト生産の機関を組立中だ。

Wartsilaと社の20気筒型機関もすでに取引段階に入っているが、その生産はフランスのミュリューズエ場へ移される。また、SCAMの生産施設でも建造される。ガス機関も数種建造されるが、シリング内径はそれぞれ18cmと22cmに拡大される。両社では新開発の機関をそれぞれの社名の下で市場に出

 

 

 

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