? 業界の展望
?-1 主要造船所
MSBと位置づけられている主要造船所は、今後2000年まで、海軍の艦艇建造と修繕工事に主として依存せざるを得ない。海軍の新造・修繕発注は引き続き縮小する見通しであり、一方商船建造の再活性化も急速な進展は見込めないことから、1998年末まで造船所の稼働率は次第に低下するものと思われる。
図3に示す造船業工事量予測は、1996年12月現在の商船建造向け労働力需要と海軍の1997〜2003年度艦艇建造計画に基づくものである。向こう10年間に、商船建造と政府の新造発注とのバランスが改善し、造船所の稼働率が現状を維持することが望まれる。
?-2 第2類の造船所
最近の穀物運賃上昇により、内陸水路向けバージ船主に新造意欲が出てきた。穀物輸送が今後も好況を続け、廃船率が現状維持ないし上昇すれば、バージ新造発注の高水準も今後しばらく続くことになろう。乾貨バージの建造に加えて、二重船殻タンク・バージの建造も今後数年間続くものと見込まれる。
?-3 1990年油濁防止法(OPA90)
0PA90により、2015年以降、米国港湾に寄港するタンカーはすべて二重船殻が義務づけられることになる。この二重船殻化に対応するために、既存の一重船殻タンカーはすべて1995年1月1日以降、段階的に市場から撤退しなければならない。OPA90の影響は、既存の米国タンカー船隊だけでなく、米国港湾に寄港する外国タンカーにも及ぶことになる。
OPA90は、環境汚染防止を強化するだけでなく、国内航路向けの二重船殻タンカーの建造需要を創出することにより、米国造船業が商船建造市場に復帰するチャンスをもたらす効果もある。
?-4 設備投資
将来の商船建造市場に一角を占めようと、多数の米国造船所が設備投資を進めている。1996年度に米国の新造船・修繕船事業は、設備の拡充に282百万ドル以上を投資した。この投資額のうち、造船所の競争力と効率改善のための投資が大きな比重を占めている。設備投資の目的には、造船所配置の刷新、屋根付きの内業工場や管工場の建設、平面ブロック生産ラインの設置、クレーン、その他運搬設備の新規購入等、インフラ充実の措置が含まれる。中でもモジュール建造工法の推進が重視されている。1997年度には約167百万ドルの設備投資が予定されている。