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ベアード・パブリケーションズ会長兼編集長

ネイル・ベアード氏(オーストラリア代表)

講演

 

今回のAPSEMは私にとって第3回目になりますが、東京で開かれるAPSEMに出席させていただくのは、今回が2回目であります。国際海運・造船業界を代表されるこのように多数の要人の方々とご一緒に今週を過ごせるのは、私にとって喜びであるとともに名誉なことであります。

2年前と同様、私はオーストラリアの造船業を代表して、この会議に出席しております。わが国の造船業は、15年前の殆ど休眠といえる状態から、不死鳥のような復活を遂げました。以来、オーストラリア造船業の生産高は、ほぼゼロに近いところから1997年と98年には年額20億米ドル前後にまで上昇しました。同期間に業界の輸出売上げもゼロから5億米ドルに伸びました。今後数年間、船艇の輸出額は著しい伸びが見込まれています。

最近進水した船体長91メートルの高速フェリーは、旅客900名と車両240台を乗せて航海速度43ノットで運航することができます。主機はディーゼルですが、3週間前の試運転では軽荷状態で50ノットを超えました。

オーストラリア造船業にとって、国防関係が引続き販路の大半を占め、一連の高性能フリゲート艦、潜水艦、掃海艇などが建造されています。また国内造船各社は巡視艇を直接輸出したり、タイやシンガポールとの合弁事業で巡視艇の建造も行っています。

オーストラリアの造船といえば高速フェリーが最も有名ですが、超大型、高性能の動力付き豪華ヨットも多数輸出しています。最近10年間、オーストラリアでは貨物船はほとんど建造されていません。オーストラリア造船業は高性能で複雑な、しかも大抵は高速の船艇に特化し、その大半はアルミやプラスチックの複合材など、ハイテクの新素材を使用するものです。

これら新素材を重視する先端的な設計・生産技術において、他国の造船業はなかなかわが国に対抗できません。

今後1,2年の間に、わが国の造船各社は船体長95メートル以上、満載速力が40ノットを優に超える車両・旅客・貨物輸送用の高速フェリーを建造する見込みですが、これは旅客・車両輸送と同様に貨物輸送にも革命をもたらすものと思われます。オーストラリア建造のフェリーではまもなく60ノット以上のものも出現するでしょう。すでに50ノットを超える旅客/カー・フェリーが輸出されています。

オーストラリアのフェリー、巡視艇、漁船、ヨットは従来からアジア市場に強固な地位を築いています。最近東南アジア向け第1号の高速カー・フェリーが輸出され、さらに多数の商談が進められています。東南アジアではこの種の船舶に対して膨大な需要が見込まれ、またオーストラリア造船各社もこの市場に積極的に参入する決意を固めています。技術革新もさることながら、品質、信頼性、船価の面でもオーストラリア造船業は世界的に定評があります。コスト・パフォーマンスでオーストラリア造船業に太刀打ちできるハイテク造船所は現在のところ、他国には見当たりません。

 

 

 

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