日本財団 図書館


造が変化し,粗粒化する場合がある。この粗粒化した物質は過塩素酸のような強酸に対する中和作用はあるが塩酸に対しては塩基価として測定されにくい。このため塩酸法のTBNが低くなるものと考えられている。ここでは,塩酸法で1.5〜5.0 mg KOH/g以上,過塩素酸で50%以上とする。

尚,過剰な添加剤成分は金属系灰分となって堆積し,逆に機関性能や耐久性を低下させる原因となるので,TBNは常に適切な値に管理することが必要である。

4)全酸価(TAN)

一応+1.5 mg KOH/gとするが,添加剤を多く含むHD油では新油時に高い全酸価をもつので,全酸価による管理はあまり意味を持たない。

5)強酸価(SAN)

強酸は腐食摩耗の原因となるので,検出されないこととする。通常,TBNが残存し,酸中和作用があれば強酸は検出されないはずであるので,強酸価が確認された場合は粘度や不溶分にも異常をきたしている等,潤滑油が異常状態になっている場合が多く,従って全量更油することが必要である。

6)水分

高TBNのHD油では,水分が混入した場合微細な粒子となるので分離は困難となる。

そこで,分離の難易度と実用上問題のないレベルとの兼合いから上限を0.2%とする。

7)不溶解分

不溶解分は溶解力の異なるn―ペンタンとトルエン(以前はベンゼンを使用していたが発癌性物質であることから使用されなくなった)を用いて測定する。トルエン不溶解分は,すすや硫酸カルシウム等の燃焼生成物と,摩耗粉,さび等外部から持ち込まれたものである。また,n―ペンタン不溶解分はこれに潤滑油自身の熱劣化,酸化劣化物を加えたものである。従って,n―ペンタン不溶解分とトルエン不溶解分との差が,一般に潤滑油の熱,酸化劣化物と考えられる。

不溶解分の測定法は凝集剤を使用しないA法と,凝集剤を使用するB法とがある。清浄分散作用の高いHD油では微細な不溶解分は油中に分散するため,A法とB法とに大きな差が生じる。また,それぞれにおいても分析試験所によっても試験法に差がある。

さらに,潤滑油中に安全に含有しうる不溶解分の量は,使用されている清浄分散剤によって大きな差がある。各石油メーカーは自社製品についての能力を知っていて,製品毎に不溶解分含有率の上限を設定しているので各メーカーの基準値に従うこと。

2.4 サリシレート系潤滑油

近年のディーゼル機関の高負荷,高出力化に対応して,高温での耐コーキング性,清浄性に優れたサリシレート系潤滑油が常用発電機関のみならず舶用機関等においても使われ始めている。高負荷,高出力機関では当初一般用よりもTBNを高目に設定し,高負荷によるカーボン堆積等に対する清浄性を高めることを目的としたが,高温における清浄性は

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION