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十年ほど前に比べてずいぶん変わってしまって残念だという声もきかれるが、それは伝統的な和風でない建物がいくつか近年に混入したためである。しかし、前述した条件からいえば、地元の生活を守るうえで重要な課題を中心に考えつつ、静かな観光ブームにこたえる課題を設定していけば、全国的にも重要なまちなみ景観としての存在意義増すものと考えられる。

純粋に視覚的状態からの課題もいくつか設定できる。瓦屋根を乗せた木造住宅を基本とし、新しく建て替えるさいにはファサードを重視し、新しい生活要求に対応していくことが基本である。格子や白漆喰の壁、屋号の付いた鬼瓦などもつ本格的な歴史的建造物はその条件ごとをよく吟味し、できるるだけそのまま残る方策をとる。自動車を複数所有する家庭も多いが、街路に面して駐車スペースをとることはどうしても避けたい。街道と住宅の間の前庭や小さい空きスペースの工夫が、街道側からの見え方をよくするためには重要である。

 

「中山道を歩いておもうこと」

島田廣己

 

現在は街道の面影を残す古い建物も残り、以後の各時代の建物もこの地特有の伝統的な工法で建てられ残っている。古い家は少なからずあり、今後老朽化が進むと、家の建て替えは間違いなくおとずれます。その時どうなるのか。

最近の景観論議のなかで、まちの景観を意識しましたと、瓦を葺いて白壁を塗る。これも大切なことですが、そんな上っ面だけの町並みにはならないでほしい。景観のシステムとは、色彩や形態そのものではないとおもいます。この地域の特有のスケールやプロポーション、又、ここで暮らす人達が長い間見続けてきた風景といったものもそれらをいかに調和さすかでしょう。数回参加したナショナルトラストのワークショップではそのことの再確認でもありました。

年毎に建て替わり、どんどん高くなってゆく新しい屋根、どんどん登場する新しい素材。そんなまちを見ていると、限られた素材でしか建てられなかった時代の方が、まちは美しく豊かであったようにおもえますも

しかし間違いなく新しい建物も登場してきます。又建って欲しいです。ただしそれはこのまちの景観システムをキチッと守った建物であってほしい。それであれば現代の素材を使った思い切りモダンな建物もあってもよいとおもいます。(それは小さな美術館がよい、それも細い路地を少し入ったところ…)

古いものと新しいもの、どちらかに偏ってしまってもつまらない。古いものと新しいものが、せめぎあうそんな活きたまちがよいとおもっております。

「ぼくの家もまちの顔」、そんな意識の中でまちが創られ、柏原らしい町並みが生まれてくることを願っております。

 

 

 

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