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4. 整備計画の前提

 

4-1 計画の課題

 

これまでにも述べてきたように、眺山丘陵において先ず第一に取りあげるべき価値は、県内トップクラスの数を有する古墳群であろう。考古学上の学術的価値はもちろん、住民が身近に接することができる町のシンボルとして、さらに豊かな自然と一体となった姿や独特の形態から観光資源としての価値も十分に認められる。このうち学術的価値については、これまでにある程度の調査がなされ、報告もなされてきた。また現在においても少しずつ調査が進められ、その全貌が明らかになりつつある。こうした地域の資産に地元の人々が触れ、それらを学ぶことができるよう、古墳が最も集中する小森山には歩道が設けられ、刈り払い等の管理がなされている。また町民を対象とした歴史や自然を学ぶ催しも何回か試みられてきた。しかし、その整備はまだ一部に留まっており、十分とはいえない。さらに、それらを学ぶ仕組み(学習システム等)についてはほとんど無きに等しい。内外からの見学者の誰もが古墳の全貌に触れることが出来るよう、ハード面・ソフト面双方の整備がなされる必要がある。

一方、自然環境の価値については、この調査で明らかにされたように、貴重な動植物が生息・自生するほか、それを育む環境として特異な形態の湿原や植生の存在が報告された。同時にそれらが盗掘などによって失われたり、環境が荒らされている実態も明らかになった。これら貴重植生、貴重動物の保護管理体制を確立し、環境の復元を進めていくことも大きな課題である。

さらに、マツタケ採取と密接な関わりをもつアカマツ林や落葉広葉樹からなる二次林の景観は「人と自然との調和的な結びつき」を表わすものである。こうした里山の景観は、かつての薪炭材や堆肥源としての落葉の採取など、人の手によって生まれ維持されてきたものであり、アカマツ林におけるマツタケの生育環境もそれによって維持されてきたといえる。また、住民の方から寄せられた手記にもみられるとおり、丘陵の景観や環境は地域の人々の原風景や原体験といった精神的な部分とも密接に関わるものである。燃料革命や生活の近代化等によってそれらの必要性や人々との結びつきが薄れた今日、里山は管理が滞り、かろうじて委託組合による管理が行われているのが実態である。こうした眺山丘陵の景観の基調を形成する里山景観の維持管理を如何にするかが課題である。

ところで、生涯学習や地域学習が注目される中で、地域の人々がこの眺山丘陵の考古学的資産や自然的・文化的資産を学び、それに触れることができるようにするかということは、大きなテーマであろう。また、最近の自然志向、アウトドア志向の高まりの中で、こ

 

 

 

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