4) 湿原の景観
丘陵中腹や沢筋の緩斜面地を中心に随所にみることができる湿原は、丘陵全体が森林という閉鎖的空間のなかにあって、窓を押し開いたような開放感を生み出している。この明るさによる森林とのコントラストは、丘陵の景観に変化を与える大きな要素であり、貴重な昆虫や植物を擁する自然価値の高い資源といえる。
また、かつての水田は放棄されたのち湿原に戻りつつあるが、水田として開拓される前は湿原だった可能性が高く、この地にとって湿原は、景観的にも暮らしのなかでも、人との関係が深い資源でもある。
5) 水面の景観
山ぎわに点在する溜池や水路等の水面は、農業用利水の合理的な手段として、自然の摂理に沿って造成・維持されてきた。これが結果として、里山の景観に潤いと変化を与え、里山に多様性を加えることとなる。また、自然の摂理に沿っているため、生物の生息を導き、環境に厚みを加えて、里山の生態系の形成にも重要な役割を果たしている。