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する一方、あらゆる製品の質の向上と品質の改善に全力を挙げて努力をいたしました。そのための基本的な手段は、技術革新への積極的な取り組みであり、かつその定着であったと申し上げてよいでしょう。

その結果として、今日まで日本の経済は順調に、ある意味では安定した成長を持続してきました。そして今や日本は、世界に冠たる高い技術水準を備えた製造業を保有するに至りました。省エネルギーを実現するためには、幾つかの方法があります。国民に訴えかけて、全国民が生活の様式を少しずつ変革することによって省エネルギーが実現するという方策もあります。また、あらゆる生活に必要なエネルギーを、これまた新しいシステムの導入とともに少しずつ節約することによって、全体としての省エネルギーを達成するという方策もあります。

しかし、経済の成長と省エネルギーを同時に達成するための唯一の手段が、技術革新への積極的な取り組みであります。今申し上げたような幾つかの方策の中で、経済の成長とエネルギーの消費を節約し、地球環境を保全していくというこの課題を両立させるための唯一の方策が技術革新への積極的な取り組みと申し上げて間違いありません。日本は、それに全力を挙げて取り組んだだけでなく、それに成功しました。それが今日の日本経済の強さであります。

省エネルギー、地球環境の保全には技術革新が必要であります。200年ほど前、18世紀の終わり、産業革命がまだ本格化していないころ、鋼を1トンつくるのに石炭が30トン必要でした。100年後、すなわち20世紀の初頭では、同じ鋼1トンをつくるのに必要な石炭の量は3トンに減りました。それがさらに20世紀、今日において最も先進的な設備を持ち、技術を持っている日本の鉄鋼業でいうなら、鋼1トンをつくるのに必要な石炭の量は700キロにすぎません。また、粗鋼から完成鋼材を得る効率が、ロシアの1トンあたり700キロと比べて日本は900キロと格段に高いのであります。

石炭を燃やせば、石炭の主たる成分である炭素が燃焼して二酸化炭素が発生します。同じ溶けた鋼1トンをつくるのに30トンの石炭が必要であった200年前と700キロで済むという今日とを比較すれば、石炭の消費量が総体的にそれだけ減って、しかも鋼のできる量が総体的に増えていくことであり、世界の鉄鋼業は、技術革新を通じて地球環境の保全の改善に大きく貢献していると申し上げてよいでしょう。

最近、日本のメーカーがシリンダーに直接燃料を吹き込む直接噴射方式という自動車エ

 

 

 

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