あ と が き
わが国においては、高齢社会の進展や障害者の社会参加の促進に伴い、高齢者や障害者等移動制約者の公共交通機関を利用する機会が次第に増えてきているにもかかわらず、駅舎等の垂直移動設備の整備は依然として遅れています。一方、鉄道事業者にとっては、国や地方公共団体、交通エコロジー・モビリティ財団からの補助制度はあるものの、従来型のエレベーターでは設置場所や設置コストがネックとなって、既存駅への設置が遅れているのが現状です。
そこで、当委員会では、鉄道駅の特殊性に配慮した省スペース、低コストで設置できる「駅用エレベーター」設備の研究・開発を進めてきました。
3か年計画の最終年度にあたる今年度は、過去2年間の研究成果を踏まえ、直角二方向に出入口があり、さらに設備の随所に車いす使用者及び高齢者の方々の利便性に配慮した試作実機をモデル駅に設置して、利便性・安全性等をはじめとする各種評価・確認、また施工上・実用上の評価等を行い、実りのある成果をおさめることができました。
この研究・開発の成果により、今まで設置が困難であった鉄道駅においてもエレベーターの設置が可能になったのは非常に喜ばしいことであり、また、今後、この開発エレベーターがひとつでも多くの駅に設置され、高齢者・障害者等の移動制約者の外出が容易になれば、望外の喜びであります。
最後に、研究・開発にあたりご協力をいただいた各委員、幹事および関係各位に深く感謝の意を表します。
平成10年3月
委員長 野村 歡