第2章 既設駅におけるエレベーター設置のニーズと開発の必要性
2.1 既設駅におけるエレベーター設置のニーズ
高齢社会の進展に伴い、高齢者や障害者と移動制約者が駅を利用する機会が増えているにも拘わらず、駅構内の垂直移動手段は主として階段である。一部の駅にエスカレーターやエレベーターが設置されているものの、移動制約者が利用しやすい垂直移動設備の整備が進んでいないのが現状である。
垂直移動設備のうちエスカレーターは、利用者にとって利便性の高い設備になっているが、移動制約者にとっては必ずしも利用し易いとはいい難く、また車いす使用者にとっては利用することができない。一部では車いす使用者のための車いす用ステップ付きエスカレーターが設備されているが、エレベーターに比べ利便性に劣る。
このため移動制約者にとって極めて利便性の高いエレベーターの設置が不可欠といえるが、鉄道事業者にとっては既存のエレベーターでは設置場所や設置がコストネックとなって、ごく限られた駅しか設置されていないのが現状である。
したがって、移動制約者にとっても利便性が高く、かつ省スペース・低コストで既設駅に設置し易いエレベーターのニーズが高まっている。
2.2 駅タイプの分類及びエレベーター設置上の特徴
駅タイプは、種々に分類される。ここでは、駅用エレベーター設備設置の目的から、コンコースとプラットホームの位置関係に注目し、駅を断面的観点からタイプ別に分類することにした。分類及び定義、エレベーター設置上の特徴は以下の通りである。また、運輸省の調査によれば、鉄道駅におけるエレベーター整備指針(資料2)より、全国にその対象となる駅(5m以上の段差があり、1日当たりの乗降客5,000人以上)の数は、約1,800駅である。駅タイプ別の内訳数を各項に示す。
2.2.1 地下式の駅(対象駅数、約500駅)
プラットホーム及びコンコースを地下に設けた駅をいう(図2.1)。大部分の地下式駅は、道路下部にあり、エレベーター設置に関しては地上部の用地問題がネックとなる。また、地下であることから、構造上の制約も大きいことが想定される。エレベーターは地上部とコンコースの連絡用、及びコンコースとプラットホーム連絡用に分離して設置するケースが多く、大部分の駅で乗換式を採用せざるを得ない。
レベル差は、地上部とコンコース間については、駅の条件により種々となるが最低でも7.0m〜8.0mとなる。コンコースとプラットホーム間のレベル差は通常、5.0m〜6.0mである。