エコ・ツーリズム
――「環境にやさしい観光」の登場
マス・ツーリズムの発達はこれまで、量的な拡大を意味していました。しかし、これからの観光に求められるのは、むしろ質的な充実です。これは人類にとっての望ましい観光のあり方を模索しようとする適正観光の考えに通じます。その流れにあって、自然環境をめぐる観光にも、さまざまな変化が現れるようになりました。これまでの開発優先というのではない、自然環境の保全をよく考えた、いわば「環境にやさしい観光」の登場です。
自然環境と調和した、環境にやさしい観光を、エコ・ツーリズムといいます。それは、観光客が自然環境に与える影響をできるだけ抑え、客自身が環境への理解を深め、自然保護への意識を高めようとする観光です。こうした観光によって得られた収益が、環境保護に役立つようなしくみも模索されています。
とはいえ、エコ・ツーリズムというのは、この10年ほどのあいだに出てきた新しい概念で、定義もはっきりとは固まっていません。自然環境ばかりでなく、地域の伝統的な生活様式や民俗文化、文化遺産といった社会環境も含めて考え、自然・社会・文化、そういったものすべてと調和した観光を、エコ・ツーリズムとよぶ場合もあります。
ここではさしあたって自然環境という問題を中心に考え、そうした自然環境にやさしい観光にはどういうものがあるのかを、日本の例を中心にしながらご紹介してゆきます。