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快適な観光環境づくりのために壊される自然

 

ですから、マス・ツーリズムをめざせば、観光のための開発は必須のものであり、そのために自然環境が破壊されても止むを得ないと考えられてきました。近代観光は、その理念のうえにおいて環境保護という問題を捨ててしまうことで成り立っていたとさえいえるのです。

都会から離れ、緑深い山々に囲まれた風光明媚な山里、澄んだ水、きれいな空気。こうした土地があり、これを観光の対象と考えましょう。集客のためには、この山里への道路が整備されるでしょう。道路整備は観光開発の基本的な項目の一つだからです。

しかし、道路建設に伴う自然環境の破壊という直接的な影響以外に、道路の完成によって乗り入れた大量の自動車の排気ガスや騒音、あるいは駐車場の不足、交通事故の増加など間接的な影響もはかりしれません。さらに、道路の完成によって都市部から大量の観光客がはいるようになりますと、ゴミの処理問題、排水問題、新しいホテルの建設によるさらなる環境破壊等々、さまざまな環境問題が連鎖的に生じる可能性があります。つまり、自然環境に親しむことを目的にした観光が、その自然環境を破壊してしまうのです。自然を破壊することは、観光が拠り所としている資源あるいは資本そのものを食いつぶし、自らの首を締めることになります。

このことは、もはや近代観光が限界に近づいていて、新しいタイプの観光への転換が迫られているということかもしれません。近代観光の展開は、より多くの人が観光旅行を楽しむ、という方向をめざして進んできました。しかし、あまりにだれでもが気軽に観光を楽しめるということが、しだいにさまざまな歪みを生み出すようになったのです。

 

 

 

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