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主催者代表あいさつ

 

水田義一

代表委員・和歌山大学教育学部教授

本日は、「環境シンポジウム IN わかやま'98」にご参加いただき、まことにありがとうございます。最初に一言ごあいさつさせていただきます。

環境問題は、かつての局地的な問題から、地球規模の課題になってまいりました。地球人口が増加し、世界各地の生活水準が上がってゆくことなどを考えますと、エネルギー消費あるいは環境問題は、もっと厳しい状況になるものと想像されます。

昨年12月、京都において地球温暖化防止にむけての国際的な枠組みが決定したことは、みなさんもご存じのことと思います。その一方で、その12月から正月ごろまでの日本は暖冬で雪も降らず、目前にひかえた長野オリンピックははたして開催できるのだろうか、あるいは寒い冬なしに春を迎えてしまうのではないか、ひいては温暖化がまぢかに迫っているのではないかと心配いたしました。地球がわれわれに与えてくれた環境を、私たちの子どもや孫の世代に渡してゆくうえで、私たちは行動によっていろいろなかたちで環境保全に寄与できるはずだと考えています。

私たちの生活は、かつての状況にくらべて便利で豊かなものになっております。その例の一つとして、交通が挙げられます。しかし、自動車を利用して私たちが移動し、あるいは物を運ぶことは、同時に大量の二酸化炭素を排出することでもあります。環境問題を考えると、二酸化炭素の排出量を増加させてはならないのです。現在は、自動車の利用の仕方を考え、さらには燃料効率のよい鉄道・バスのあり方を見直すことが、重要な課題となっております。

あるいは、私たちの生活を豊かにし、リフレッシュさせ、さらには見聞を広めるなどの役割を果たしている観光について考えてみましても、観光客が特定の季節に、特定の場所に集中することは環境に大きな影響を与えます。自然環境と共存できる観光のあり方を考えることは、和歌山県にとっても重要な課題であると思われます。

ご存じのように、和歌山県は山地が多く、県域はそれぞれ川の流域によって分かれております。そのうえで、河口のまちに人口が集中しており、広い山間部は人口希薄な地域になっております。小さな地域単位で分かれている和歌山県は、日本列島の縮図のような場所ではないかと思うしだいです。こういう性格の和歌山県が、環境に大きな負荷を与えないかたちで交通あるいは観光のあり方について考えることは重要な課題であり、また和歌山県においてこの問題について考えることは、たいへん有意義ではないかと思います。

このシンポジウムでは、地球規模の環境を視野に入れながら、自然と共生できる和歌山県での「エコロジカルな旅と交通」はどうあるべきかを、各分野でご活躍されていらっしゃる専門家の方がたの意見をもとに、みなさまといっしょに考えてゆきたいと考えているしだいです。

 

 

 

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