6. 本調査研究の意義と今後の展望
わが国における労働災害の中で、船員の労働災害の被災率は、林業に次いで高率になっていることは、残念ながら認めなければならない現実である。
もとより関係者の努力は、十分に重ねられていると思われるが、事態の改善は遅々としていることも認めざるを得ない。
作業の舞台が、海上で、かつ、制約の多い船内・船上であることによる作業や環境選択の不如意も、人間の行動に影響を与え、要因の主要部分であることは、まぎれもない実態である。特に漁業に従事する船員の場合は、それらは顕著である。しかしながら、漁業の宿命であるとして、対策への努力を緩めることは許されない。
それらは船員の「人命に関わる」課題であり国民生活への影響も派生するからである。
今回は改善の目標を、特に改善への期待の強い「大中型まき網」漁業における災害の実態の調査と、危険の発生を極限にまで減少可能な作業標準化の策定を目標に、現状の実態の調査を進めると共に、「安全」を「士気と能率に悪影響を及ぼすことのない作業」の中に組み込めることを目標に、そのガイドラインとなる「作業標準」の策定に、貢献可能な調査・解析を進め、必要な提言をまとめることを目指した。
調査は、関係各機関のご協力をいただいて、順調に進めることができ、貴重なデータを得ることができた。それらの解析により、より安全な作業を、能率への悪影響をほとんど随伴することなく、組み立て得ることを見出した。
それらは動作分析から、危険な場面に成長することをミニマムとする動線研究、それらに基づく人員配置や、機器・システムの研究へと展開が可能である。
作業の標準化の設定意義としては、ほとんどの作業において、機械類の活用と協調が求められるが、その機械類では、作動と共に大容量のロープや漁網などが巻き取られ、あるいは放出される場面が多く、それらの容量・重量、さらにその動きが安全上きわめて危険な場面を作ることが起こり得る。それらは、実態を十分に意識されて、機械と作業の設計に組み込まれるべきものであり、そのための実用的な指針が必要となるのである。
今後の方向として意識したいことは、予防医学における一次予防と二次予防の概念のように、再発防止が主体の二次予防型の安全対策はもとより、新型の危険をも予見して対応する一次予防型の安全対応(この場合、新造船に期待できる)への執拗とも見られる努力を注ぐべきであろう、と思われる。
報告書の本文は、それらへの布石としても、活用されることを念願するものである。
千葉工業大学・教授 飯山 雄次