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は間違いだ。もし、中国の為替管理のようなことで中国モデルに対する形成というものが見られているとすれば、それはアメリカとしても問題にせざるを得ない。民主主義にしても人権にしても、アジアがそのような形で中華世界に引き込まれる契機になってもらっては困る」というようなことをおっしゃっていました。

私も同感なのですけれども、ただ同時に、これは単に中国モデル・日本モデル・アジアモデルで、その中の上げ下げがどうだ、インアウトがどうだという問題ではないと思います。つまり、今回の問題は基本的にはエマージングマーケッツが共通に抱えている問題であると思いますし、グローバルな広がりをも相当見せていると思うのです。ロシアにしてもそうです。韓国がロシアの約40億ドルの資金を引き上げて、ルーブルが暴落するということが報道されていますけれども、実は、中国も新しい資本は入ってきませんし、かなり韓国の資本引き上げを感じ始めているところもあります。中南米もブラジルなど、メルコスールも関税引き上げの方に動いています。アジア・太平洋・中南米同時に進行していたオープンリージョナリズムそのものが試練に立たされているという認識をするべきだと思います。

アメリカについては、グローバライゼーションに対する逆流がかなり起こっています。ケビン・フィリップスというアメリカの政治コンサルタントで、ポピュリズム的なところに対する感度に非常に鋭敏な人がいますけれども、彼がニューズレターの中で、「アジアに対するIMFアメリカの支援問題、これは今後数年間の米議会、あるいはアメリカ政治のポピュリストイシューとして浮上する可能性が強い。90年代に入ってからNAFTA、ウルグアイラウンド、それからこの間のファーストトラックで、アメリカの議会や国民の中に、グローバライゼーションに対する逆流・反発が間違いなく生まれている。クリントンが、NAFTAとかウルグアイラウンドは民主党を割って共和党と手を握って通すというようなことまでしてきたが、アジア救済に関して、それと同じようなインパクトを及ぼすだろう」と言っています。

今回のアジアの危機に対しても、IMFに対するアメリカの趣旨、さらにアメリカの韓国に対する17億円の支援にしても、「これは国民の税金ではないか。アジアの連中が昼からフランスワインなどを飲んでいい生活をして、『アジアの世紀』とか言って浮かれているのがぽしゃっただけだ。どうしてアメリカの国民の税金でそれを助けてあげなければいけないのか」という反発がまずあります。アジアに対しておもしろくない気持

 

 

 

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