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3. 国内法の捉え方

 

(1)ガット条約と国内法の関係

最初にガット条約を国内法との関係においてどのように位置づけるかを考えておく必要がある。そこで、ここでは国際法と国内法の関係を説明する。

 

国際法とは国家間の法であり、国際社会においてのみ行われる法である。ガット条約はこれに当たる。一方、国内法とは基本的には国家社会の内部的関係を規律の対象とするものである。

ここで問題となるのは、消極的抵触(国際法を履行するのに必要な国内法が存在しない場合)や積極的抵触(国際法に反する国内法が存在する場合)をいかに処理すべきかということである。

そして目下直面しているのは、URセーフガード協定に対応するわが国の規定がガットと整合性を持つように一本化された法律の形式をとっていないところから、消極的抵触により近い問題といえよう。

このような状況のもとで、国内裁判官が適用すべき法とはどのようなものかを考えてみる。一般的に国内裁判官は国内法や国内法に受容変形された国際法を適用すべきであり、国家が締結した国際協定であっても国内法化されていない場合には適用すべきではないとされている。が、例外として、ある問題について国際法には規定があるが国内法には規定がない場合でも、1. 国内法の立法精神の尊重 2. 国内法の現行体系の保全、の二条件を満たす時は裁判官は国際法に従うべきである、とされる。

この考え方によれば、仮にセーフガード規定を国内法で明記していなかったとしても、基本的には国内の規定と整合性があればUR合意の内容は、日本国内において効力を有すると考えられる。しかし、各国と足並みをそろえる意味でも、できる限り法令として国内の法体系で明記していくことが望ましい。

 

(2)法令のオプション

以上のことを考えて、セ一フガード規定を法令として明記するならば、セーフガードをどのレベルの法令で規定するか、ということが問題になってくる。ここでは、法令の様々な形式を説明する。

一般に法令という場合には、成文の国内法の意味に用いられる。わが国の法制のもとでの法形式の最頂点にあるのが憲法であり、憲法以外の法令の形式として、憲法が直接定めたものに法律、政令などがあり、その他に憲法が直接定めてはいないが、法律に基づいて認められる法形式として省令などがある。

 

 

 

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