日本財団 図書館


1996年には2,600万人を越え、これは海外旅行者受け入れとしては世界第5位の数字となっている。観光情報収集調査に際して中国各地の観光関係者との意見交換において、何処においても海外旅行者に最も人気のある旅行メニューは三峡下りとシルクロード旅行であり、後者は日本人旅行者がパイオニアとして開発してきたものであるという評価を受けた。

シルクロード旅行が日本人海外旅行市場において口の端にのぼるようになったのはほんの10数年以前のことである。

当時の状況は、現地の旅行経験者も少なく、現地事情に関する情報の入手も困難であったが

? 素晴らしい歴史文化資源は存在するものの、広大な地域に散在している。

? 交通施設の整備が遅れていて鉄道以外の移動手段が無く、地域間の移動に著しく時間がかかり、座席の確保が困難で、予約が原則として不可能であること。空港が未整備で国際航空輸送便の就航が困難であり使われている機材も旧ソ連邦製のものが大部分で、輸送力が劣り、信頼性に欠けていること。

? 宿泊施設の水準が低く、快適な滞在の可能な国際水準のホテルが西安以外に存在しないこと。

? 観光客用の大型バスが殆どなく、シルクロードの観光地点に至る道路が未整備で車高の高いバスでない限り使用に耐えないこと。また、使用されているバスの旅行は快適性に欠けていること。

? 飲食サービス施設が不足し、温かい食事や日本人の口にあう食事が期待できないこと。また、衛生上の問題があり、安心して飲める水が入手し難いこと。

? 日本語ガイドが払底していて、意志疎通や旅行の便宜に支障を来すこと。

? 悪臭ふんぷんたる仕切のない便所の使用にカルチャーショックすら受けかねないこと。

? 旅行シーズンが夏場に限定され、本格的な観光開発に取り組むことが困難であること。また、夏場の炎暑と乾燥は宿泊施設、休憩施設等の未整備やエアコンなしの旧式のバスでは旅行においてかなりの苦痛と困難を伴うこと。

など観光開発や観光振興を推進する上で明るいものとは言えないものであった。結局夏期に限定した西安を中心とした地域における修学旅行等の団体旅行が可能ということであった。

しかし、これまでの3回にわたる調査により、中国内におけるシルクロード旅行を取り巻く環境要件は多少の地域差はあるものの著しく改善されて来ていることが判明した。具体的には

? 兵馬俑、莫高窟、高昌故城、交河故城、キジル千仏洞等のこれまで知られている歴史文化資源等に加えて、楡林窟、河倉城、魏晋墓、スバシ故城、クズルガハ等の新たな資源が登場し、シルクロード地域の観光魅力は年々増して来ていること。

? 空港整備の推進、新鋭機材の導入、道路整備の進捗などにより空路と道路を組み合わせた旅行が可能になり、輸送力の増大が図られ、移動に要する時間の短縮が可能になっていること。

? 宿泊施設の整備が推進され、西安以外の主要観光地点において、鍵がかかり、冷暖房設備が整備され、24時間お湯が出て、清潔なリネンサプライがなされ、温かい食事の出るホテルが存在するようになっていること。

? 主要観光地において、エアコン付き、時にはトイレ付き、リクライニングシートのある最新鋭のバスの導入がなされ、快適な旅行が可能になってきていること。

? 主要観光地においてはホテル等で温かいバラエティに富んだ食事がとれるようになってきていること。特に新疆ウィグル自治区においては果物や野菜が豊富で、多種多様な麺や

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION