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ってきているということを考えますと、しかもそれが、それぞれの地域でそれぞれ違ったデザインとして発展しているというところに、私はしがらみを感じています。何かといえば、そういう風に外国からいろんなものが来る。東からも来る。西からも来る。それをそれぞれの土地の人が自らの、新しい一つの文化としてそれを開発していき、そこに大きな意味がある訳であります。その辺を私はやはりシルクロードというものを、実際にその現場を見てまわって、観光して回ってそれを認識することに、大きな意味があるというふうに感じています。そういうものを理解するための観光事業というものは、大いに促進してもらいたいと思います。

しかし、私のような研究者の立場から申しますと、その貴重な観光資源という遺跡を、如何に保存していくか、そしてそれを一般の人に如何にみせるかという、そのテクニックが私は、非常に大事だと思います。中国のシルクロードの遺跡には烽火台というのがあります。あの烽火台をどうやってみんなに理解させていくか、そういうものに十分なご配慮をいただいて、そして観光資源として活用していただきたいというのが私の願いなのです。

観光地が開発されて、新しいホテルビルや新しい旅館が建つことがあります。例えば、観光開発により烽火台というすばらしい景観がつぶれてしまうというのもなきにしもあらずです。私は遺跡というものは、周囲の環境と併せて保存していくということが一番大事と思います。私は一ヶ月位前、トルコのカツパドキアというところからから首都のアンカラまで、車で移動しましたが、そこには現在でもシルクロードが残っています。そしてその途中に、キャラバンサライが残っています。その道は、昔、ペルシャのダリウス王が建設しました。それを次にアレクサンダー大王がペルシャを征伐するために、その道を通って、遠征して行った道なのです。その道は現在も周りの山、川など全てアレクサンダー大王が見たのと同じ景色を見ているのだという印象を、私はその道を通ったときに痛感しました。本当にこれは素晴らしい経験だと思いました。

中国でもそういうシルクロードがあるならば、それをやはり周りの環境も含めて保存しておいていただきたい。それで烽火台についても、あの烽火台から本当に次の烽火台との間に信号が出来るのか、そこで一回実演でもしてみていただいて、烽火を上げていただき、それが遠くから見えるということが、実際に体験出来れば、細かく何も説明しなくても満足すると思います。本当に昔は大変だったんだなあと、そういうことで本当に交信がで出来たんだなあということが体験出来るんだと思うんです。

そういう体験というものが、実は将来非常にその人にとって大きな人格形成に役に立つと思います。そういう素晴らしい観光資源が豊富にあるんですから、それを十分に活用していただいて、この観光事業をますます盛大にしていただくことを心から願って私の話を終わりたいと思います。

 

 

 

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