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● 樋口隆康団長の講演

「シルクロードから学ぶこと、その歴史的資源の活用と保全」

 

乃依木旅游局長の心のこもったご挨拶と新疆の現在の状況について詳しくご説明していただきまして、本当に有益で我々一同、感銘いたしました。実は、私は1979年に初めて新疆にやってきましたが、その時にはまだウルムチもこんなに大きな大都会ではなくて、ホテルも普通の小さなものでありました。それから思いますと、今回その大発展振りにびっくりいたしました。私は考古学者であります。観光ということに関しまして、新疆は非常に豊富な遺跡を持っております。観光資源の活用という立場からお話させていただきたます。

中国では「旅游」、日本で使っている「観光」という言葉にはもともとは、中国の人が言う、光り輝くものを見る、それぞれの土地の一番いいものを勉強するという意味があります。我々にとって、いかにもぴったりとした大変いい言葉ではないかと思っています。良いものを勉強するということは、我々人間形成の面で非常に重要なわけでございます。また一方では、経済効果というものも非常に期待されるわけであります。

日本人にとってシルクロードは非常に関心が高いのでございます。それは一体どういうことかといいますと、まずは、シルクロードという世界が日本の環境と非常に違っております。日本は島国でありまして、ところが中国・シルクロードの一つである新疆ウイグル自治区は、周りの多くを他の国と接触している内陸の辺境にあります。しかも非常に砂漠が多い。この砂漠の中には、色んなものが隠されているではないかといったような夢とロマンをかき立てるというところに、日本人は非常にシルクロードに対して深い思いを持っている。

新疆の旅行につきまして、先ほど色々と現在の様子を聞きました。その時のお話でも日本人の観光客は、毎年1万人以上来ること、しかしその大半はもう50〜60才以上の年配の人達で、あまり若い人はいないというお話でありました。それはどういうことかなと考えておりましたが、やはりシルクロードを理解するには深い見識が必要だが、まだ若い人が十分には理解していない。日本では、例えば、漢の時代に武帝が張騫を派遣した。あるいは法顕や玄奘がシルクロードを旅した。あるいは西の方で言えば、アルキサンダー大王が東方遠征でやってきたとか、そういう歴史的なことについて、高齢者の方は知っておりますが、現在の若い者にはあまり深い理解がありません。そのために、関心が薄いのではないかなという風に考えます。

旅行業者の人から聞いたお話によりますと、やはり観光事業で一番いいお客様というのはやはり20代〜40代位の若い女性の方で、その方々は暇もあるし、お金もあるし、色んな好奇心もあります。そういう人達を狙いにした商品が一番効果的だという話をきいたことあります。そういう若い人たちもぜひ私はシルクロードに来ていただきたいと思います。

それはなぜかと言いますと、シルクロードについて、何が一番意味があるかと言いますと、これはやはり先ほどのお話にありましたように、東の中国と西のローマというように当時の世界の2大国、それがお互いに非常に友好的に当時の国際的な文化交流、経済交流そして政治的交流をしていました。しかもそれがただ単に両大国だけでなくて、通過した地域に対しても色んな大きな影響を与えております。それは現在、世界で非常に求められております国際協力というもので、その時期が人類の歴史の中で最も成功した華やかな時期でありました。即ち、シルクロードを介した国際交流だというふうに思うわけであります。ですから私は若い人達にも是非シルクロードの実態を知っていただいて、そして国際交流は、将来、21世紀でも課題になります。国際交流というものに深い関心を持ち、そして効果のある行動をしてほしいという期

 

 

 

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