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●受容性

提案されている開発計画は国家全体として承認できるものであるか。長期的な経済的・社会的目標に適したものか。関連する地域社会を尊重し、環境や文化についての高度な保持基準を確実に維持することが可能か。

●収益性

計画中の開発を実施する価値があるか。公的機関や民間組織による投資を行なうに値するだけの収入や雇用、収益を生む必要があるか。地域開発により間接的な利得が充分に得られるか。例えば、新しい観光地として計画されている伝統的遺産の所在地へ向けて新しい道路や橋を建設する場合、商業活動や通信計画網の面で便利になる為、その地域全体を更に開発する誘因となり得る。従って、より良い公共施設と地域の発展に関する全般的な影響を考慮する為には、計画中の観光開発をより広い意味で検討する必要がある。

●管理の容易さ

提案中の開発は実施可能なものでなくてはならず、国民や国家の経済的負担が大き過ぎてはならない。提案されている開発は、地域社会の文化的枠組みや伝統からあまりにも逸脱したり、それらを脅かすものであってはならない。また、影響を受ける地域社会とは充分な話し合いを持ち、計画中の開発が実行可能な容認できるものになるよう、ゆっくり時間をかけて調整する。

●持続性

開発計画は、財政面を含むあらゆる意味において持続可能なものでなければ受け入れられない。経済、社会、文化及び環境への影響は、短期・長期に拘わらず慎重に分析し、計画立案や規制設定の段階では、否定的な影響は全て最小限に止められるよう気を付ける。

 

?. 結論

私の考えでは、文化や伝統の持つ力は継続的に更新されなくてはなりません。鍵をかけてしまい込んだり、ガラスの向こうに閉じ込めておくことはできないのです。文化や伝統は活力に溢れ、絶えず変化を続けます。その変化は多様で、時には相対立するものさえあります。

それ故、政府には、確実に継続性と変化のバランスを取る責任があります。変化のない社会など存在せず、誰しも変化に立ち向かう必要があるのです。政府が規制の設定や計画立案という過程を踏まなかった場合でも、いずれにせよ変化は生じるのです。しかし、歓迎されない破壊的な変動であることもしばしばあります。短期的な営利上の利害が優先されることもあるかもしれません。手をこまねいて何もしなくとも、何らかの影響を生むことになります。観光事業や伝統的遺産の管理に関する複雑な過程について、責任を放棄しないことが、関係当局の義務であるのです。

 

地域文化と観光の結合:

韓国における事例について

コリア・ツーリズムリサーチ・インスティテュート(KTRI)

観光政策研究室長・観光学博士

チョイ・スンダム(崔 承淡)

 

?. はじめに

地域文化は観光開発の主要な構成要素であり、観光イベントに独自性を与えてくれるという点で有益であります。文化的観光開発によって、地域社会は自らの文化的資産の真価を認め評価する機会を与えられます。また、儀式的行事や芸術、工芸品の伝統的手法等といった文化的資産の奨励・保護にも貢献し、地域住民の自尊心や相互の結びつきを高める上でも一役買っています。更に、文化的観光開発は、より多くの観光客を誘致し、観光収入を増やすことにもつながる為、地域経済の活性化を促す効果的な方法であると言えます。

韓国政府は、文化的観光開発の多彩な役割を認識し、地域文化と観光の結合に関心を抱いています。政府は、とりわけ観光局が運輸省から文化・スポーツ省に移管された1994年末以来、文化的観光開発に大変力を注いでいます。韓国政府は、1995年に文化と観光の結合について基本計画を作成しました。その中でも重要な施策として、地域社会における文化的観光のイベントの支援が挙げらています。

今回の発表では、韓国における文化観光イベントについてお話しする予定です。まず、韓国政府が地域の文化観イベントを振興する目的で採用した主な政策を紹介します。次に、文化観光業のイベントの例として錦山(Kumsan)高麗人参祭の事例を挙げて詳細を語ることにします。三番目に、文化観光業のイベントに関して事例から学んだ事柄について議論します。

 

?. 韓国における文化観光イベントの振興策

韓国における文化観光イベントを振興する為の主な政策を要約すると、下記のようになります。

まず、文化的イベントを全て支援するのではなく、幾つかを選択した上で政府が強力な支援を行ないます。選択の基準となるのは、主として文化的独自性や観光客を惹きつける可能性といった要素です。1996年には、全国の300以上の文化的イベントの中から8件が選ばれ、政府の後援を受けました。

次に、イベントを開催する地域社会の多くに予算の制限があることを考慮して、中央政府や地方自治体が資金援助

 

 

 

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