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同じような問題を引き起こしてきました。その教訓から、アメリカ赤十字社は、ボランティアの登録制度を設け、「烏合の衆」型のボランティアが被災地に殺到しない工夫をしています。

被災地でどのような活動ができるのか、活動可能な期間や時間帯など、様々な情報をデータベース化しておき、災害が起こるとコンピューターでその情報を検索して、適切なボランティアを派遣します。

むろん、被災地で活動を行う際に留意すべき点など必要なことは、事前のトレーニングでボランティアに教育します。

被災者の自立を妨げないボランティアのあり方をわきまえた人たちが主となって、被災地への支援ができる体制づくりに取り組んでいるのです。

 

4 災害弱者とボランティア

阪神・淡路大震災では、行政とはまったく別のところで、多くのボランテイア組織が動いていました。

被災後10日目に、障害者への支援を呼びかけるビラが、被災地の電話ボックスや避難場所に張り出してあるのを見かけました(写真)。

「震災で被災し、困っている障害者の情報を求めています。支援を求めている方、そして支援ができる方は、ここに電話をして下さい」という内容のメッセージが書いてありました。

震災から10日目の頃というのは、在宅の障害者や介護を必要とする高齢者などに対し、行政からはほとんど支援の手が届いていない時期でした。

このビラを貼っていたのは、これまで障害者の支援活動を幅広く行ってきた組織です。「わたぼうしコンサート」という名前を聞いたことがあるかも知れませんが、障害者と健常者が共に音楽を楽しむコンサートをずっと開いてきた団体です。

その方達が、被災地に住む障害者の方たちの安否を気づかい、また、自分たちの培ってきた人的ネットワークを総動員して、障害者を救うボランティア活動に取り組んでいたのです。

災害時にボランティアが有効に活動するためには、どこにどのようなニーズがあるかを知った上で、集まってきたボランティアを受け入れ、上手に派遣するコーディネート機能を発揮できるかどうかが最も重要な要素となります。

この団体は、自分たちの日常的な活動のノウハウを、そのまま、震災という緊急事態に移行させたわけです。

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同じようなボランティア活動として、震災以前から関西に居住する外国人の生活支援を行ってきたボランティア組織が、震災後に、外国人被災者に対し母国語で情報提供を行うテレホンサービスを開始した例もありました。

いずれも、日常的に「民」の力によって弱者を支援する実績を持っていたからこそ、ボランティアを受入れ、被災者の切実なニーズに的確に対応することが可能だったのです。

 

おわりに

災害時のボランティア活動の最大の目的は、被災者と被災地がなるべく早く自力で立ち直る力を取り戻し、再建してもらう事に他なりません。しかしこれは災害時のボランティアだけに言えることではなく、平時のボランティア活動であっても、この原則は変わりません。

ボランティアによる支援を受ける人の能力が最大限活かせるよう、ボランティアはあくまでも脇役として支援活動を行えば良いのです。

ところが、日常的な生活の中でも、ボランティア活動に無縁な人が多い日本では、災害現場においてもこの点をわきまえて行動できる人が少ないようです。

防災ボランティア活動を真に定着させるためには、ボランティアを志す一人ひとりの市民が成長しなければなりません。災害が起きてしまった後にボランティアをどう受け入れるかよりも、災害が起こる前の平和な時代に行われる地道な防災ボランティア教育のほうがずっと大切なのです。

 

 

 

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