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坂田郡消防本部は、管内ほぼ中央の山東町長岡に位置し、1本部・1署、職員48人、車両20台で、40,000住民の安全を守っている。平成八年の救急出場件数は1,103件で、急病・交通事故は言うに及ばず、スキーヤー・登山者・ハイカーの負傷や急病、パラグライダー墜落・冬山遭難・山菜採りの事故等、毎年10数件の山岳救助事案が発生しており、訓練を重ね、山岳装備も徐々に充実を図っている。また、一昨年より運用を開始した滋賀県防災航空隊ヘリコプターとの連携による救助事案も、幸か不幸か、県内最多を数えている。

ここに紹介するのは、スキー場で死者の発生した雪崩事故捜索活動の概要である。

 

1 事故概要

(1) 発生日時

平成9年1月26日(日)午前10時頃働

(2) 発生場所

坂田郡伊吹町甲津原 Oスキー場

(3) 気 象

天候 雪、気温2.2℃、風向 西北西

風速 0.1m、湿度 99.9%

積雪 20cm(本部)200cm(現場)

風雪注意報発令中

(4) 出場隊

10時22分 指揮隊   1台 3人

10時34分 救急隊   3台 9人

11時10分 救助隊   1台 5人

現地災害対策本部派遣  1台 2人

(5) 人的被害状況

重 症 1人(12日後に死亡)

軽 症 6人(3人搬送・3人現場処置)

負傷なし2人(医師の診察を受けた者)

(6) 雪崩の規模

幅 約15Om・高低差 約50m

斜度 約30度・長 さ 約50m

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2 活動概要

「0スキー場で雪崩発生。スキー客多数が巻き込まれた模様。」との通報を受け、情報収集と後続隊の指揮運用のため、当務隊長以下指揮隊2人が冬山装備を整え、四輪駆動の査察広報車で先行出場。途中、地元居住の職員1人をピックアップし現場に向かう。天候は、ときおり激しい降雪が視界を遮る劣悪の状態の中、道路の除雪も不完全で、シーズン真っ只中の日曜日でもあり、不慣れな雪道で立ち往生している車や駐車場に入れ切れず停滞している車、諦めて下山してくる車に阻まれ、1.5km手前からは徒歩で車両を排除・誘導しながら、管内最遠地点、本部から約33km、30分の道程を倍近くの50分かけて現場到着。スキー場は約2,500人のスキーヤーで賑わい、BGMも流れ、雪崩が発生しパニックとなっている雰囲気はない。

パトロール室に向かうと、スノーボートで1人が運ばれて来たところで、関係者が慌ただしく行き交い混乱の極にある。責任者は報道機関の電話取材に忙殺され、現場の詳しい状況把握はできていない。救出された要救助者は呼吸停止状態で、看護婦資格を持つパトロール隊員、客として居合わせた医師や某消防局救急救命士らにより蘇生処置がなされている。関係者の話では、雪崩発生の約20分後に救出され、現場で約40分間の蘇生処置により心拍は再開したが自発呼吸はない。

パトロール隊のスノーモービルで、救護所より約1km上の雪崩現場に向かう。現場は初心者向きの緩斜面で、5〜8人が3組程のグループになり、スコップで雪を掘ったり、ストックを使って捜索している。圧雪車2台も、堆積した雪(デブリ)を掘り返して捜索に当

 

 

 

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