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ワンポイント

消防職員のための法令用語解説

 

申請に対する処分 (3)

 

6 拒否処分の理由の呈示

 

行政庁は、拒否処分をする場合は、同時にその理由を示さなければならない(行政手続法8条1項)。

そして、拒否処分を書面でする場合は、その理由を書面で示さなければならない(同法8条2項)。

拒否処分に理由を必要とするのは、行政庁の判断の公正性、合理性が担保されることや不服申立ての便宜のためである。

ただし、次の場合には、申請者の求めがあったときだけ、理由を示せばよい。

それは、法令に定められた許認可等の要件又は公にされた審査基準が数量的指標その他の客観的指標により明確に定められている場合であって、申請が、これらに適合しないことが申請者の記載又は添付書類から明らかであるときである(同法8条1項但書)。

大量処分の場合の行政庁の負担軽減のために設けられた規定である。

 

7 情報の提供

 

行政庁は、申請者の求めに応じ、申請に係る審査の進行状況、申請に対する処分の時期の見直しを示すよう努めなければならない(行政手続法9条1項)。

親切な行政の実現のための規定である。申請者にとって、最も関心のある事項について情報を提供する努力義務を課したものである。

また、行政庁は、申請をしようとする者や申請者の求めに応じて、申請書の記載方法や添付書類に関する事項や、その他、申請に必要な情報の提供に努めなければならない(同法9条2項)。

これも、親切な行政の実現のための規定である。

行政庁としては、親切に情報を提供する努力をしなければならない。

その際、誤った情報を提供しないように注意しなければならない。

誤った情報により、損害を受けた者がいる場合には、国家賠償請求の対象になるだろう。

 

8 公聴会の開催

 

行政庁は、申請に対する処分で、申請者以外の者の利害を考慮すべきことが、当該法令で許認可の要件とされているものを行う場合には、必要に応じ、公聴会の開催、その他の適当な方法により、当該申請者以外の者の意見を聴く機会を設けるよう努めなければならない(行政手続法10条)。

これは、申請者以外の者の利益を保護する規定である。

申請者以外の利益を守る規定としては、例えば土地区画整理法20条で、土地区画整理組合の設立認可の申請に際し、施行区域内の市町村長による公衆の縦覧、利害関係人の意見書の提出といった手続きを定めているものもある。行政手続法10条の規定は、利害関係人に、公聴会等の開催により、意見を聴く機会を与えるよう努めなければならないとしているものである。

 

9 複数の行政庁が関与する処分

 

複数の行政庁が関与する処分についても、それぞれの行政庁が審査の促進に努めるべき規定として、行政手続法11条が定められている。

全消会顧問弁護士 木下 健治

 

 

 

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