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消防最前線

 

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したが、間一髪で救出できた。

(3) 万一に備えて、隣接する老人病院関係者に避難体制の指示をしたが、病院方向からの集中放水と各隊の懸命の消火活動により、20時27分鎮圧、20時56分に鎮火した。

4 本火災の問題点と教訓

(1) 発見及び通報の遅れ

寮長が外出中だったため、火災の通報は国道を挟んだ農協の職員であった。

この通報者は、通行人から火災を知らされ、外に出て見るとすでに福祉施設の北側開口部からは黒煙が噴き出していたので引き返し、119番通報した。

(2) り災建物は、昭和43年頃店舗として新築、その後隣りの住宅と同一棟として改築し、昭和63年頃から身体障害者の軽作業所として用途変更され、さらに平成6年頃から精神障害者の収容施設として引継がれていたため、この施設の存在や内容が把握されていなかった。また、この建物は、消火器及び自動火災報知設備もなく、火災には無防備の状態であった。

(3) 初期消火の失敗

障害者施設等の特徴であるが、初期対応が遅れた。初期消火をしたのは、農協職員であったが、消火器の薬剤が火元に有効にとどかず、消火に失敗した。

(4) 放火火災

この火災の原因は、精神障害者(52歳)が「電波の指示を受けたので、自室の押入れの布団に、 ヘアスプレーを噴霧し、ライターで新聞紙に火を付けて、布団の上に置いた。」と供述している。

5 むすび

当組合発足以来、福祉施設からの火災は初めてであり、かつ、防火対象物としての把握ができていなかったことを反省し、防火対象物の立入検査を強化し、さらに関係行政機関からの情報収集に努めて、災害のない安心して暮らせる街づくりに、邁進していきたい。

(諫山 隆)

 

救急・救助

マンホール内における酸欠事故について

釧路市消防本部(北海道)

 

はじめに

釧路市は、北海道の東部、太平洋沿岸のほぼ中央に位置し、面積は大阪市とほぼ同じの221.3k?u、人口は約20万人である。

水産・石炭・製紙の三大基幹産業を中心にラムサール会議等の国際会議の開催やウォーターフロント開発等にも力を注ぐ、北海道東部の中心都市である。

市の北には阿寒国立公園の山並を遠く望み、南は大平洋に面している。

また、北方に展開する釧路湿原は昭和62年に28番目の国立公園として指定を受け、学術的にも貴重な動植物が多く生息し、特に丹頂鶴の生息地として有名である。

消防体制は、1本部・3署・6支署、消防職員は287人、消防団12分団・4特設部、団員数359人の体制で、年間火災件数約100件、救急件数約5,900件に対応している。

今回紹介する事例は、下水道工事現場のマンホール内で発生した酸欠事故での救助・救急活動の概要である。

 

 

 

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