表紙絵から
池田げんえい/1946年神奈川県生まれ。日本児童出版美術家連盟、現代童画会会員。創作『鬼の会』同人。日本デザイナー学院講師。はり絵作家。
● 平成・東海道五拾三次
その36 「御油(ごゆ)」
広重の面影がしのばれる街並
―松並木―
今日からは見慣れた東海道線とサヨナラし、赤い名古屋電鉄に変わる。別れるのがつらい。記念に名鉄で「御油」まで行くことにした。こんな日にかぎって足の調子がいいんだな…。
バス停の待ち合い小屋のような駅を降りると、国道1号線が無表情に横に延びている。ほとんど人もいない。目の前の大きな店は駅には背を向けて、あくまでもドライブインだ。空腹、イライラ気分で街の方へ歩くうち、ほどなく周囲とは違った雰囲気のスナック出現。まるで土地の若者全員が集合したような感じで、みなモーニングサービスをほおばり、マンガを読んでいる。そこの若いマスターに地図を書いてもらい、シブく「御油」の図に立つ…、が、確信が持てず辺りをウロウロ。するとある40代くらいの女性が、間違いなくこの場所だと、まるで広重さんの友人のような口振りで教えてくれた。見ると絵の女性そのものの顔。ボクは絶対そうだと確信した。
木立ちの緑に囲まれて…。
安藤広重絵「御油」
客引き女につかまる旅人2人。にぎやいだ旅篭の一風景だ。そして右側の札に"東海道続画"、左側の旅篭の入口には「大當(おおあたり)や」の文字。広重のこの「東海道五拾三次」シリーズを扱った保永堂の自信がユーモラスに表現されている!?