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「子供は親の心を映す鏡!?」

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堀田 鹿島先生のお撮りになる写真、今も手元で拝見してますが、本当に素敵ですね。

鹿島 子供っていうのはこんなに開放的で、こんなに明るいんだと自分自身で確かめたい、みなさんにも少しでもわかってほしい、そんな思いで撮ってきました。

堀田 それと「あのねちょう」ノート、子供らしい心が実に正直に書かれていて、感心しました。

鹿島 毎日自分の目で見たことや心に感じたことを書いてきなさいと。それに私が返事を書くんです。それで喜んでまた書いてくる。大人は六、七歳のほんの子供と思っても、そこには鋭いユニークな発想やほのぼのとしたやさしい世界があるんですね。読んでいると心がわくわくします。

堀田 本当にそうですね。子供の頃は知識よりむしろ豊かな感性をしっかりとはぐくむことが必要です。今、子供の数が減って、特に専業主婦の方は長い時間接していられるから、本当に一生懸命子育てされてる。ただそれが、知識を教え込むことだけに熱中し過ぎて人間性をゆがめてしまったり、甘え過ぎにしてしまったり、とか。

鹿島 そうですね。就学直後の子供たちの様子を見れば、家庭でどう育てられてきたか、わかります。例えば一年生でもうかけ算の九九ができる子がいます。二歳、三歳の時から親が算数を教えていて、四年生くらいの勉強もやってしまう。学力が一番大事という育て方をしている親です。ところが生活づくりはまったくダメ。授業中も、その子は知っているもんだから先生の話も聞かない。机の中はグジャグジャ、ランドセルにも、ろくに物もしまえない。

堀田 よくある例ですね。基本的な生活習慣を何も身に付けさせずに、知識だけを詰め込む。人に対する思いやりなど生まれようもないし、その子の人間性もゆがめてしまう。

鹿島 ある時、ドリルのテストをしたんです。「3+5」とかね。それで「全部済んだら遊びに行っていいよ」と。そうしたらその子、「学(まなぶ)君」っていうんですよ。お母さんの意気込みが名前に表れているような子で(笑)。それで本当にあっという間にやってしまうんですね。

堀田 (笑)。さぞかし誇らしげに。

鹿島 「うわーい、できたぞー」って教室を飛び出して行った。そうして目立つことがものすごい快感なんですね。しばらくして、別のある女の子が答案を出して、机の上をきちんと片づけてる。でも遊びに行かないので「エリナちゃん、どうして遊びに行かないの?」と聞いたら、黙ってひとつ後ろの席へ行ったんです。

堀田 ほほお。どうしたんですか?

鹿島 アヤちゃんというちょっと算数が苦手な子がいましてね。一生懸命だけどなかなかできない。エリナちゃんは、「アヤちゃんもできたらいいね」といって、おはじきで「2+3」とか手伝ってる。アヤちゃんは「ああ、そうか」といって答えを書いていく。まったく対照的です。どうして六歳の子にそういう人間性の違いがあるのか。やはり親の姿勢の違いなんですね。

堀田 子供を見れば親がわかるというまさに実例ですね。

 

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鹿島さんの自著、「学級通信1年1組あのね帳」(PHP研究所)より。屈託のない笑顔、ちょっとはにかんだ表情、担任である鹿島先生の前に子供たちは心のままの素直な表情を見せる。

 

 

 

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