表紙絵から
池田げんえい/1946年神奈川県生まれ。日本児童出版美術家連盟、現代童画会会長。創作『鬼の会』同人。日本デザイナー学院講師。はり絵作家。
● 平成・東海道五拾三次
その32 「荒井(新居)」
浜名湖夕景
―浜名湖夕景―
「あそこの大きな橋の下が切れているだろう。今、切れたからここら辺を今切というんだ」―何だかワケのわからないことを漁師がいう。明日確かめようと舞坂に宿をとった。今切の弁天島から見た夕日はカメラマニアの垂涎(すいぜん)の的だともいっていた。荷物は宿、身軽な気分、夕日に向かって青春気分。シャッターを切りながら弁天島を通り、湖西の橋をのんびり渡ると意外にアッサリと新居関所跡に着いてしまった。「荒井」は乗合舟で島をめざしている絵。そうか、昔はこの橋がないため、舞坂(今切)と荒井(新居)それぞれ2枚の絵になるほど、道中が大変だったのだろう。絵の向こう側の島は現在も「向島」という地名だ。そんなことどうでもいいか…。意外な距離に気が抜けてトボトボと宿に戻った。
新居関所跡
安藤広重絵「荒井」渡舟ノ図
舞坂から荒井までは舟で渡る。幔幕を張った2隻の舟は大名の一団。右手前方に見える関所をめざして進む。手前の船に乗った足軽などのお供のなかには、あくびや居眠りをしているものも…。