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ふれあい社会づくりグループから

 

ふれあいネットワーク事業の港、世田谷調査から見えてきたことを、ほんの少しご紹介しましょう。

話し相手とゴミ出しボランティア

港区はデイサービスを受ける利用者を福祉バスで移送する、いわばステーション方式で、ドア・トウ・ドアで送り迎えはしていません。ここが一つ問題になるのです。たとえば、高齢者がエレベーターのない建物に住んでいたとします。その場合、その方の症状にもよりますが、介助者が1階まで誘導し、福祉バス停留所まで介助する必要があるわけです。介助は、家族かボランティア、あるいはデイサービスセンターの職員が行うことになりますが、職員の人手は決して多いわけではありません。家族がいたとしても、ご高齢であれば介助は不可能かもしれません。また、ボランティアでお願いしていた方が急に夕方になって不都合になった場合、組織間の連携等がうまくいっていれば、翌朝のボランティア手配はスムーズにいき、B組織のCさんに確実にお願いする、といったことが考えられますが、こうした連携がない限り、ボランティアは当てにならない、ということにもなります。

また、ところによって状況は変わりますが、約15人の利用者を乗せた福祉バスは、最初にピックアップした方がデイサービスセンターに着くまでに約1時間半を要します。逆にいえば、この1時間半の同乗に耐えられる方でなければ、デイサービスは利用できないということでもあります。このことは、単に、行政が悪いとかいいとかいうのではなく、本当に必要な方、あるいはその家族にとっては利用できないシステムである、ということの裏返しになる可能性がある、ということです。

さらに、痴呆のお一人暮らしの高齢者のケアの場合、日頃から、その方にかかわれるボランティアが必要だという声があります。家族との連絡調整や、話し相手、ゴミ出しボランティアが欲しいというのです。ヘルパーさんや民生委員さんだけがかかわるのではなく、その周りに住む方々のほんのちょっとした支え合い、それも、定期的な地縁ネットワークによる支え合いも必要なのです。

また、世田谷の調査からも同様の報告があるのですが、会食や配食サービスによる声かけや見守りが今後ますます重要になってくるということが確認されつつあります。

世田谷の「老人給食協力会ふきのとう」は14年前から「地域は一つの家族」をテーマとして、地域の中で助け合う活動を実践している団体ですが、政策ビジョンが明確化し、ハード面もサービス内容も充実しつつある世田谷にあって、「ふきのとう」の平野眞佐子さんやそのスタッフの活動そのものが、現在ある世田谷政策のべースをつくったのではなかろうか、というのが、世田谷調査チームの実感のようです。

なお、今後は、調査による発見や驚きの部分をコーナーを変えて展開していきます。どうぞ、よろしく。  (奈良)

 

 

 

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